妊娠で髪質が変わるのはなぜ?原因と対策・正しいケア方法【医師・美容師監修】
- 2025.8.12
- m.i journal vol.11
- コラム

眞鍋 憲正さんスポーツドクター・運動生理学研究者
信州大学医学部を卒業後、同大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座博士課程を修了。米国UT Southwestern Medical Centerの内科部門およびInstitute for Exercise and Environmental MedicineにVisiting Senior Scholarとして招かれ、さらにUT Austin Faculty of Education and KinesiologyのCardiovascular Aging Research LabでもVisiting Scholarとして心血管老化と運動生理学の研究に従事。研究分野は運動生理学を中心に、スポーツ医学・健康スポーツ医療、心血管老化研究を含む幅広い領域をカバーしている。日本体育協会スポーツドクターおよび日本医師会健康スポーツ医の資格を有し、現在はThe University of Texas at Austin(UT Austin)に所属しながら、臨床と研究の両面で地域および国際的なスポーツ健康科学の発展に貢献している。
妊娠中、「髪がサつく」「うねる」などの変化に戸惑う方も多いと思います。こうした髪質の変化には、ホルモンや栄養状態の影響が関係しています。この記事では、医師と美容師の監修のもと、妊娠中に起こりやすい髪の悩みとその原因、そして毎日の生活に無理なく取り入れられるケアの工夫について、わかりやすくお伝えします。
妊娠中に多く見られる髪の変化
妊娠期には、髪質の変化に驚く方も多くいらっしゃいます。特に初期から中期にかけては、体の変化とともに髪の状態も大きく揺れ動きます。ここでは、妊娠中によく見られる髪のトラブルや変化の特徴を紹介します。
髪がパサつく・ごわつく
髪のうるおいが失われ、手触りが変わったと感じる方は少なくありません。以前はしっとりしていた髪が、妊娠を機に乾きやすくなるケースもあります。
この変化は、ホルモンバランスの乱れや妊娠・つわりなどによる栄養不足により、水分や油分が髪全体に行き渡りにくくなるために起こります。特に毛先がパサついたり、髪が広がってまとまりにくくなったりすることがあります。外出時や乾燥した室内では、静電気や摩擦によってさらにごわつきが強くなることもあるため、日常の保湿ケアが大切です。
うねり・クセ毛が増える
妊娠中はホルモンバランスの影響で、一般的には髪の生え変わりのサイクルが変化し、一時的に抜け毛が減る方が多いとされています。しかしホルモン変化に対する影響は個人差が大きいのも特徴です。
特に体質や体調の変化によっては、うねりやクセが目立つようになったり、髪がまとまりにくくなったりする場合があります。
> 妊娠中に髪が抜ける原因と対策|産後の抜け毛についても解説【医師監修】
フケ・かゆみが強くなる
頭皮に関する変化も妊娠期にはよく見られます。皮脂の分泌バランスが崩れやすくなるため、乾燥しやすくなったり、逆にベタつきを感じたりすることもあります。
その結果、フケが増えたり、頭皮がかゆくなったりすることがあります。また、乾燥によって毛の水分が不足し、クセがより強く出てしまうこともあります。過度な洗髪や刺激の強いシャンプーは、こうした状態を悪化させることもあるため、やさしい成分でつくられたアイテムを選び、頭皮をいたわることが大切です。
髪質の変化を引き起こす主な原因
妊娠中に髪質が変わる背景には、体の内側で起きているさまざまな要因が重なっています。ホルモンや栄養、日々の暮らし方など、複数の要素が影響し合っているため、変化の現れ方も人それぞれです。ここでは、髪質の変化につながる主な原因を4つの視点から見ていきます。自身の体調や状況と照らし合わせながら、無理のない範囲でケアのヒントを探してみてください。
女性ホルモンの急激な変動
妊娠すると、女性ホルモンのバランスが大きく変わります。この変化が、髪の状態にも強く影響を与える要因の一つです。
妊娠中は「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類のホルモンが多く分泌されます。エストロゲンは髪の成長を促し、プロゲステロンは抜け毛を抑える働きがあるため、妊娠中は一時的に髪が増えたように感じることもあります。しかし、出産を迎えるとホルモン量は急激に減少します。この急激な変化により、妊娠中に維持されていた髪が一気に抜けたり、髪質が細く弱くなったりすることがあります。
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つわりによる栄養不足
髪は主にヨウ素やたんぱく質を必要とし、健康な髪の維持にはこの他にビタミンも欠かせません。ところが、妊娠によってこれらの栄養素は欠乏しがちになり、更につわりで食事が偏ったり、食欲が落ちたりすると、栄養不足に拍車がかかります。栄養が足りない状態が続くと、髪のハリやツヤが失われやすくなり、切れ毛やパサつきといった変化を感じやすくなります。
新陳代謝の変化と皮脂分泌の増加
妊娠中は体温が少し上がり、新陳代謝も活発になります。この変化は一見健康的にも思えますが、頭皮や髪には別の影響が出ることもあります。
代謝が上がることで、汗や皮脂の分泌が増えやすくなります。頭皮がベタつきやすくなったり、毛穴の状態が不安定になったりすることで、フケやかゆみといった症状があらわれることがあります。また、皮脂が多くなると、髪が重たく感じたり、スタイリングしづらくなったりする場合もあります。一方で、体調によっては皮脂が減って乾燥する方もおり、状態には個人差があります。
ストレス・睡眠不足・生活習慣の乱れ
妊娠期は、心身ともに変化の大きな時期です。環境の変化や不安によって、ストレスを抱えやすくなる方も少なくありません。妊娠による睡眠不足といった生活習慣の乱れも、抜け毛の一因となることがあります。睡眠不足や体の疲れが続くと、自律神経のバランスが崩れやすくなり、血流が滞ることがあります。頭皮への血行が悪くなると、髪に必要な栄養や酸素が行き届きにくくなり、髪の成長や質にも影響が出やすくなります。ストレスや疲れが積み重なると、髪だけでなく全身の不調につながることもあります。まずは、無理のないペースで休息をとり、リラックスできる時間を意識的につくることが大切です。
妊娠中の髪質変化にどう向き合う?正しいヘアケア方法【美容師監修】
髪質の変化に気づいたとき、まずは「どうしてこうなったんだろう」と不安を感じる方が多いかもしれません。でも大丈夫。変化の理由を知り、日々のケアを少し見直すだけでも、髪と頭皮のコンディションは少しずつ整っていきます。ここでは、美容のプロの視点を交えながら、妊娠中におすすめのシャンプーや日常ケアの方法をご紹介します。無理なく続けられる、やさしいケアを選んでいきましょう。
シャンプー・トリートメントの選び方
髪と頭皮を清潔に保つことは、トラブルを防ぐための基本です。ただし、妊娠中は肌も敏感になりやすいため、アイテム選びには注意が必要です。
保湿力の高いクリームシャンプー
髪のパサつきが気になる方には、クリームシャンプーという選択肢もあります。泡立てずに洗うことで摩擦を軽減しながら、髪と頭皮に必要なうるおいを守ってくれます。
避けたい成分(高級アルコール系・αオレフィン系など)
市販のシャンプーには、洗浄力の強い成分が使われていることがあります。高級アルコール系(ラウレス硫酸Naなど)やαオレフィン系の洗浄成分は、必要以上に皮脂を取りすぎてしまうことがあり、敏感な妊娠期には刺激になる可能性があります。配合成分を確認し、なるべく肌にやさしい処方の製品を選ぶと安心%