妊娠中の肌の黒ずみは治る?原因と産後も役立つケア方法を紹介【医師監修】
- 2025.9.23
- m.i journal vol.26
- コラム

阿部 一也さん産婦人科専門医
東京慈恵会医科大学医学部医学科を卒業後、板橋中央総合病院に勤務。現在、同院産婦人科医長を務める。産婦人科領域における幅広い臨床経験を有し、妊娠・出産の周産期医療から婦人科疾患の診療、内視鏡手術まで多岐にわたり診療に携わってきた。確かな臨床力と丁寧な診療を基盤に、安全で信頼性の高い医療を提供。
妊娠中、脇や乳首などの黒ずみが目立ってきて、戸惑っていませんか?
見た目の変化に不安を感じ、「どう対処すればいいの?」と悩む方も少なくありません。
本記事では、黒ずみの原因から、起こりやすい部位、日常生活でできるケアの工夫、産後の変化までを丁寧に解説します。読み終える頃には、肌の変化を冷静に受け止め、自分らしいケアに前向きに取り組めるようになっているのではないでしょうか。
妊娠中の肌が黒ずみやすくなる理由
妊娠中はホルモンバランスの変化や肌環境の乱れによって、黒ずみが起こりやすくなります。特に脇や乳首、デリケートゾーンなどの皮膚は色素沈着の影響を受けやすく、普段より濃く見えることがあります。さらに、乾燥や衣類の摩擦などが加わることで、肌への刺激が蓄積されやすくなります。こうした変化は一時的なもので、多くの妊婦さんに共通する現象です。原因を知るだけでも、気持ちが楽になることもあります。
ホルモンバランスの変化による色素沈着
妊娠すると、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」や「プロゲステロン」が急激に増加します。これらのホルモンはメラニン色素の生成を促す働きがあり、その影響で肌が黒ずみやすくなるのです。特に脇の下や乳首、デリケートゾーンなど、もともと色素が多い部分はより濃く見える傾向があります。病気ではありませんが、突然の見た目の変化に戸惑う方も多いでしょう。まずはホルモンの影響による自然な変化であることを理解するのが大切です。
肌の乾燥によるバリア機能の低下
妊娠中は肌の水分量が減りやすく、乾燥が進めばバリア機能が低下しやすくなります。肌のバリア機能が落ちると、外からの刺激に敏感になり、色素沈着が起こりやすくなります。特に、乾燥しやすい部位に摩擦や刺激が加わると、黒ずみが悪化しやすいです。こまめな保湿ケアを心がければ、肌のうるおいを守り、刺激を受けにくい状態に整えやすくなります。乾燥対策は黒ずみ予防の基本です。
衣類や摩擦による刺激の影響
きつめの下着や締めつけのある服を長時間着ると、肌への摩擦が増えて黒ずみの原因になります。妊娠中は肌が敏感になっているため、普段は問題ない刺激でも色素沈着につながることがあります。特に脇や股まわりなど、衣類が直接当たる部分は要注意です。柔らかく通気性の良い素材を選び、なるべく締めつけの少ない服を着るように意識するとよいでしょう。日常のちょっとした配慮で、肌への負担を軽くできます。
妊娠中の肌の黒ずみが現れやすい場所
妊娠中はホルモンの影響で、特定の部位に黒ずみが出やすくなります。特に色素がもともと多い部分は濃くなりやすく、変化に気づく人も少なくありません。脇やデリケートゾーン、乳輪まわり、そしてお腹の中心線(正中線)などが主な箇所です。これらはどれもよくある変化で、産後に自然と薄れるケースもあります。
脇やデリケートゾーン
脇やデリケートゾーンは、妊娠中に特に黒ずみが目立ちやすい部位です。この部分は皮膚がこすれやすく、もともと色素が濃いため、ホルモンの影響を受けやすくなります。さらに、下着や衣類の摩擦、汗による蒸れなども刺激となり、黒ずみの原因につながることがあります。デリケートな箇所だけに、見た目の変化に戸惑う方も多いかもしれませんが、一時的なものとして受け止めるのも大切です。
乳輪・乳首まわり
乳輪や乳首まわりも、妊娠中に色が濃くなりやすい部位のひとつです。これは赤ちゃんが母乳を探しやすいように、視認性を高めるためともいわれています。医学的には「妊娠性色素沈着」と呼ばれ、ホルモンバランスの変化が大きな要因です。多くの人が経験する変化であり、出産後は時間の経過とともに徐々に元の色味に近づくこともあります。あまり神経質にならず、肌全体のケアを意識して過ごすのがポイントです。
正中線やお腹
妊娠すると、お腹の真ん中に縦に入る「正中線」と呼ばれる線が目立ってくることがあります。これはホルモンによってメラニンが増えるために起こる自然な現象です。特に妊娠中期以降、お腹が大きくなるにつれてはっきりしてくる人もいます。産後には薄くなっていくことが多いため、特別な処置をしなくても大丈夫な場合がほとんどです。気になる場合は、保湿を意識することで、肌の状態を整えていくことができます。
妊娠中の黒ずみのケア方法
妊娠中にできる黒ずみの多くは、毎日のケアでやわらげることができます。肌のバリア機能を守り、外からの刺激を減らすことで、色素沈着を防ぎやすくなります。基本となるのは、保湿ケア・栄養の摂取・紫外線対策の3つです。どれも体へ負担が少なく、今日からでも始められるものばかりです。無理のない範囲で、できることから取り入れてみましょう。
肌にやさしい保湿でバリア機能を守る
黒ずみを防ぐには、肌の乾燥を防いでバリア機能を保つことが大切です。乾燥した肌は外部からの刺激に弱く、メラニンの蓄積を促しやすくなります。毎日のお風呂上がりや朝のスキンケアで、保湿をしっかり行いましょう。
保湿剤は以下のような成分を含むものがおすすめです。
- セラミド
- ヒアルロン酸
- グリセリン
無香料・無着色の低刺激タイプを選ぶと、肌にやさしく使えます。肌のうるおいが保たれると、摩擦やかゆみも起こりにくくなります。
ビタミンCを取り入れる
ビタミンCは、メラニンの生成を抑える働きがあり、黒ずみ対策に効果的です。体の内側から肌にアプローチできるため、食事に意識して取り入れるのがポイントです。例えば以下のような食品にはビタミンCが豊富に含まれています。
- ブロッコリー
- パプリカ
- キウイやいちごなどの果物
サプリメントに頼るのもいいですが、まずは食事からの摂取を意識しましょう。特にビタミンCは熱に弱く、調理中に失われやすいため、生で食べる方がおすすめです。摂取し続けていけば、肌の明るさを保ちやすくなります。
紫外線対策で肌の刺激を防ぐ
紫外線は肌にとって大きな刺激となり、色素沈着の原因にもなります。妊娠中は特にメラニンが増えやすいため、紫外線対策は欠かせません。
日常生活でできる対策には、以下のようなものがあります。
- 日焼け止めを毎日使う(SPF30程度でOK)
- 帽子や日傘を活用する
- 長袖やUVカット素材の衣類を選ぶ
曇りの日や室内でも紫外線はゼロではないため、毎日のケアが大切です。肌を守る意識を持てば、黒ずみ予防につながっていきます。
気になる黒ずみ、産後に薄くなっていくの?
妊娠中にできた黒ずみは、産後に自然と薄くなることが多いです。これは、出産後にホルモンバランスが落ち着くことで、肌の状態が徐々に変化するためです。しかし、すぐに元通りになるとは限らず、部位や体質によっても差があります。なかには数ヶ月で目立たなくなる人もいれば、長引く場合もあります。正しいケアを続けながら、焦らず見守ることが大切です。
自然に薄くなるケースは多いが個人差がある
多くの黒ずみは出産後に自然と薄れていきますが、改善のスピードには個人差があります。ホルモンの分泌量や肌の回復力、日常のケアの有無などが影響するため、すべての人が同じように戻るわけではありません。例えば、産後3〜6ヶ月で気にならなくなる人もいれば、1年以上続くケースもあります。気にしすぎず、自分のペースで肌と向き合うのが大切です。
ホルモンバランスの変化が影響している
妊娠中に増加した女性ホルモンは、出産後に急激に減少します。この変化によって、肌のメラニン生成も徐々に落ち着き、黒ずみが目立たなくなっていくことが多いです。特にホルモンバランスの変化が原因で起きていた色素沈着は、体が元のリズムを取り戻す中で、少しずつ明るさを取り戻していくことが期待できます。とはいえ、産後はどうしても育児の疲れや睡眠不足が続きやすい時期。心と体の回復をゆっくり待ちながら、無理のないペースで自分をいたわってあげましょう。
回復しやすい部位とそうでない部位がある
産後の黒ずみは、部位によって薄くなりやすさに差があります。例えば、お腹の正中線や乳輪まわりは、比較的早く目立たなくなる傾向があります。一方で、脇やデリケートゾーンなど摩擦が多い部分は、時間がかかることも。毎日の生活の中で、摩擦や乾燥などの刺激をできるだけ減らすことが、回復のサポートにつながります。部位によって変化のスピードが違っても、焦らずに見守ってあげましょう。
気になるときは、専門医への相談がおすすめ
出産からしばらく経っても黒ずみが濃いままで気になるときは、皮膚科や産婦人科に相談してみましょう。色素沈着の原因によっては、医師による外用薬やスキンケアの提案がある場合もあります。無理に自己判断で強いケアなどを行うと、逆に刺激となって悪化することもあるため注意が必要です。不安を感じた時は、早めに専門家のアドバイスを受けると安心です。
日常生活でできる黒ずみ予防の習慣
妊娠中にあらわれる黒ずみは、ちょっとした毎日の工夫でやわらげることができます。衣類の選び方や睡眠、体の動かし方など、無理なく続けられる習慣がポイントです。肌に直接触れるものや、体の内側から整える意識が、色素沈着の予防につながります。大がかりなケアではなく、小さな積み重ねを大切にしましょう。
肌にやさしい素材で、肌への摩擦を減らす
黒ずみを防ぐには、肌に負担をかけない衣類選びが欠かせません。特に脇や太ももの付け根など、摩擦が起きやすい部位は注意が必要です。
おすすめのポイントは次のとおりです。
- 綿などの柔らかい素材を選ぶ
- 締めつけの少ないサイズ感を選ぶ
- 縫い目やタグの位置にも配慮する
小さな刺激の積み重ねが色素沈着につながるため、肌に直接触れる下着やパジャマこそ見直してみましょう。
こまめな水分補給と質の良い睡眠で内側から肌を整える
肌の調子は、体の内側のリズムと深くつながっています。水分不足や睡眠の乱れがあると、ターンオーバーが滞り、黒ずみが残りやすくなることも。
意識したい習慣は次の2つです。
- 喉が渇く前に、常温の水を少しずつ飲む
- 夜更かしを避けて、7時間以上の睡眠を確保する
睡眠中は肌の再生が進みやすいため、しっかり休むことで、自然な肌の回復力を引き出してくれます。
適度な運動で血行を促進
無理のない範囲で体を動かすのも、黒ずみ予防に役立ちます。血行が良くなると肌に栄養が届きやすくなり、ターンオーバーも整いやすくなります。
妊娠中におすすめの軽い運動例は以下の通りです。
- 室内でできるストレッチやヨガ
- 天気の良い日のゆっくりした散歩
- お風呂上がりの軽い体操
医師の許可を得た上で、心地よく感じる程度の運動を習慣にすると、気分転換にもなります。
まとめ
妊娠中の肌の変化に、驚いたり、戸惑ったりすることは少なくありません。
「私だけかも…」と思う気持ちも、きっと自然な反応です。
でも、今のあなたのからだは、新しい命を守るためにたくさんの変化を受け入れています。
その変化に、焦らずやさしく向き合っていけたら、それだけで充分すばらしいこと。
m.i(ミィ)は、そんな毎日を、そっと支える存在でありたいと願っています。
あなたの肌と心が、少しずつでも軽やかになっていきますように。