産後の肌がザラザラするのはなぜ?忙しいママでも続けられるケアとは【医師監修】
- 2025.11.5
- m.i journal vol.37
- コラム

西野 枝里菜さん産婦人科専門医
東京大学理学部生物学科を卒業後、同大学薬学部薬科学専攻修士課程を修了。名古屋大学医学部医学科を卒業し、JCHO東京新宿メディカルセンターで初期研修を行う。その後、都立大塚病院で産婦人科後期研修を修了し、久保田産婦人科病院に勤務。基礎科学から臨床医学に至る幅広い学びと経験を活かし、産婦人科医として女性の健康を支えている。
資格:産婦人科専門医/母体保護法指定医/日本医師会認定産業医
出産後、「肌がザラザラして化粧のりが悪い」と感じていませんか?実はホルモンや生活リズムの変化が大きく影響しています。本記事では、産後の肌がザラつく理由と、忙しいママでも無理なく続けられるケア方法を解説します。読み終えるころには、自分の肌を前より心地よく整えられるヒントが見つかるでしょう。
産後に肌がザラザラになるのはなぜ?

出産後に肌のザラつきを感じる人は少なくありません。その背景には、ホルモンバランスの急な変化や生活リズムの乱れがあります。さらに授乳や睡眠不足によって乾燥が進み、角質が厚くなりやすくなります。こうした要因が重なることで、肌はなめらかさを失いザラつきを感じやすくなります。原因を知れば対策もしやすくなり、少しずつ整えるきっかけになるでしょう。
ホルモンバランスの乱れによる影響
妊娠中に多く分泌されていた女性ホルモンは、出産を機に急激に減少します。この変化により皮脂や水分の分泌量が減り、肌のうるおいが失われやすくなります。乾燥した肌はバリア機能が弱まり、外からの刺激を受けやすくなるのです。その結果、手触りがごわつきやすく「ザラザラ感」として表れます。これは自然な変化なので、まずは仕組みを理解することが大切です。通常、ホルモンバランスは産後半年〜1年程度で徐々に整っていきます。「肌の変化はいつか終わる」と、前向きに考えてみましょう。
ターンオーバーの乱れと古い角質の蓄積
産後は体調や生活リズムの乱れから、肌の生まれ変わりであるターンオーバーが滞りやすくなります。本来なら自然にはがれる古い角質が残ってしまい、肌表面に積み重なることでザラつきを感じるのです。さらに角質が厚くなると、化粧水の浸透も妨げられ、乾燥やくすみの原因にもつながります。肌をやさしく整える習慣を取り入れれば、悪循環を防ぎやすくなるでしょう。
授乳や睡眠不足による乾燥やバリア機能の低下
授乳による水分消費や睡眠不足は、肌の乾燥を加速させます。体が休まらないことで血流も滞り、肌に必要な栄養が届きにくくなるのです。その結果、バリア機能が低下し、わずかな刺激でもカサつきやザラつきが目立ちやすくなります。産後特有のライフスタイルが大きく影響しているため、無理をせず、できるときに、できることから取り入れていけば十分です。
ザラついた肌を整えるために見直したい習慣

産後の肌のザラつきは、ちょっとした生活習慣の積み重ねから悪化しやすくなります。スキンケアの方法だけでなく、洗顔の仕方や日々の食事、体のめぐりに関わる習慣が大きく影響します。育児で忙しいと自分のケアを後回しにしがちですが、毎日の過ごし方を少し意識するだけでも肌の質感は変わってきます。小さな工夫でも積み重ねることで、なめらかな心地よい肌を取り戻しやすくなるのです。
洗顔の力加減やすすぎ方
ゴシゴシこすって洗うと、肌表面の角質層を傷つけてしまうことがあり、バリア機能の低下につながります。ザラつきが気になるとつい念入りに洗いたくなりますが、それが逆効果になる場合も多いのです。洗顔料はしっかり泡立て、泡で肌を包み込むようにやさしく洗いましょう。熱すぎるお湯は乾燥を悪化させるため、すすぎは32〜35度前後のぬるま湯が理想的です。タオルで拭く際も強くこすらず、軽く押さえるようにするだけで刺激を減らせます。毎日の洗い方を見直すだけで、ザラつきやごわつきは軽減できるでしょう。
うるおい不足と角質の詰まり
乾燥によって角質が硬くなると、肌表面がごわつき、毛穴に皮脂や古い角質が詰まりやすくなります。この状態が続くと「ザラザラ感」が強まり、化粧水の浸透も悪くなってしまいます。洗顔後はなるべく早く化粧水で水分を与え、その後に乳液やクリームでフタをしてあげましょう。保湿を重ねれば角質が柔らかくなり、自然とターンオーバーも整いやすくなります。特に頬や額など乾燥しやすい部分には、重ね付けも効果的です。うるおいを補う習慣が、肌のなめらかさを支えてくれます。
ジャンクフードや冷たい飲み物
食生活も肌の調子に直結するので気をつけたい要因です。揚げ物やスナック菓子など油分や糖分の多い食事は皮脂分泌を乱し、角質の厚みを増す原因になります。冷たい飲み物の摂りすぎは体を冷やし、血行を妨げて代謝を鈍らせます。結果的にターンオーバーを乱し、ザラつきやくすみにつながるのです。忙しい毎日でも、スープや温かいお茶を取り入れる、野菜やたんぱく質を一品加えるといった工夫は続けやすい方法です。無理のない範囲で食生活を整えることが、肌をすこやかに保つ一歩になります。
産後の肌をなめらかに整えるスキンケア方法

産後は肌の調子が不安定になり、ザラつきや乾燥が気になりやすい時期です。特別なケアを増やすよりも、シンプルで続けやすい方法を選ぶことが大切です。基本のスキンケアを整え、肌状態に合わせて無理なく工夫すれば、少しずつなめらかな質感を取り戻せるでしょう。
シンプル処方のふき取り化粧水で整える
朝に時間がないときは、“洗顔”の代わりに、顔を水でさっと洗ってタオルでやさしく水分をふき取ったあと、ふき取り化粧水で余分な角質や汚れをオフするのがおすすめです。アルコールや香料が強いものは刺激になるため、なるべく成分がシンプルなタイプを選びましょう。ふき取りを取り入れることで、化粧水や乳液がなじみやすくなり、うるおいを感じやすくなります。忙しいママでも数十秒でできる手軽な方法なので、育児の合間にも取り入れやすいケアです。
角質ケアは週1回から始める
産後は肌が敏感になりやすいため、角質ケアは毎日ではなく週1回程度から始めるのが安心です。スクラブやピーリングを強く行うと逆に肌を傷める可能性があるため、やさしく使える低刺激のものを選ぶと良いでしょう。古い角質をためないことで、肌のごわつきやくすみが和らぎ、なめらかさが戻ってきます。無理をせず定期的に行うのが、肌の調子を整える近道になります。
肌状態に合わせてアイテムを調整する
毎日同じスキンケアをしていても、肌の状態は季節や体調で変化します。乾燥が強いときは保湿力の高いクリームを足し、ベタつきが気になる日は軽めのジェルを選ぶなど、臨機応変に調整しましょう。無理に多くのアイテムを使わなくても、そのときの肌に合ったものを選ぶことが重要です。自分の肌の変化に気づき、必要なケアを取り入れれば、無理なくザラつきを整えていけるでしょう。
育児中でもムリなく続けられる肌ケア

育児中はまとまった時間がとれず、スキンケアをゆっくり行うのが難しい時期です。だからこそ、短時間で効果を感じられる方法を選びたいと考える方も多いと思います。無理に手間をかけなくても、シンプルで続けやすいケアを習慣化するだけで、肌のザラつきを和らげやすくなります。
1アイテムで完結させる時短保湿
忙しいママにおすすめなのは、オールインワンタイプの保湿アイテムです。化粧水・乳液・美容液が一つになっているため、数ステップの手間を省けます。塗るだけで水分と油分を同時に補えるので、時間がなくても肌を整えやすいのが魅力です。パック効果のあるタイプなら、塗っている間に家事や育児を進められるのも利点です。
沐浴後の自分のスキンケアタイム
赤ちゃんをお風呂に入れたあとは、短時間でもスキンケアを行うのが理想的です。お風呂やシャワーの後には肌が乾きやすくなっています。そのため、赤ちゃんの着替えが終わったら、数分でも自分の肌に化粧水や保湿剤をなじませる習慣を持つことがおすすめです。日々の小さな積み重ねが、産後の肌をなめらかに導いてくれるでしょう。
肌のザラつきを感じたときの心の整え方

産後の肌が思うように整わないと、不安や落ち込みを感じることも。肌の変化は出産後に体が「回復している途中だよ」と教えてくれている大事なサインです。ポイントは「今の状態を受け止めて少しずつ整えていく」気持ちを持つことです。完璧を求めすぎず、できる範囲でケアを続ければ、自分らしさを取り戻す第一歩につながります。小さな変化に目を向け、頑張っている自分を認めるだけでも気持ちは軽くなるでしょう。
まとめ
産後の肌が思うように整わないと、不安になったり、自分を責めてしまうこともありますよね。けれど、それは体が大きな変化を乗り越えている証でもあります。ホルモンバランスは産後半年〜1年程度で徐々に整っていくので、焦らず、少しずつできることを積み重ねていけば大丈夫です。
m.i(ミィ)は、そんな揺らぎの時期を過ごすあなたに寄り添いたいと願っています。完璧を目指す必要はなく、自分にとって心地よいと感じるケアを続ければ、肌と心をゆるやかに整えてくれるはずです。
日々の中で「大切にできた」と思える瞬間が、あなたの自信と笑顔につながっていきますように。

