妊娠中に髪を染めてもいい?赤ちゃんと自分を守る安心ケア【医師監修】
- 2025.8.14
- m.i journal vol.12
- コラム

五藤 良将さん内科医・内分泌代謝科専門医
千葉県立東葛飾高校卒業後、防衛医科大学校医学部を修了。自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターでの勤務を経て、2019年9月に先代より竹内内科小児科医院を継承開業。日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医など多岐にわたる資格を有し、糖尿病・AGEs・動脈硬化の研究と診療を専門領域とするほか、総合内科・糖尿病内科・小児科・美容皮膚科・再生医療・睡眠医療・産業医・スポーツ障害・感染症対策など幅広い医療分野で地域医療の発展に尽力している。
妊娠中でも、おしゃれを楽しみたいという気持ちは自然なもの。でも「髪を染めても大丈夫?」と迷う方も多いでしょう。本記事では、医師の監修の元、妊婦さんが安心してヘアカラーを選べるよう、赤ちゃんと自分の体を大切にできるケアのポイントをご紹介します。
妊娠中に髪を染めても平気?気になる影響について
ヘアカラーは、ちょっとした気分の変化やリフレッシュにもつながるものです。妊娠中に取り入れたいと思っても、「赤ちゃんに影響があるのでは?」と心配になる方もいるのではないでしょうか。
実際には、体調やタイミングによって注意が必要な場合もあります。ここでは、妊娠中に髪を染める際の体や赤ちゃんへの影響、避けた方がよい時期、そして選ぶ際に意識したいポイントについて、わかりやすく整理していきます。
赤ちゃんに影響が出る可能性はある?
髪を染める薬剤には、化学成分が含まれていることが一般的です。そのため、妊娠中に使用することで赤ちゃんに悪い影響があるのでは、と心配になる方も少なくありません。
現在のところ、一般的なカラー剤の使用が赤ちゃんに明確な悪影響を与えるという科学的な根拠は見つかっていません。多くのカラー剤は、頭皮からごくわずかに吸収される程度とされており、胎児に直接届く可能性は低いと考えられています。ただし、妊娠中は体の状態が不安定になりやすいため、念のため不安がある場合は主治医に確認しておくと安心です。また、使用する薬剤の種類や使用量にも注意し、できるだけ負担の少ない方法を選ぶことがすすめられます。
妊婦さんの肌が敏感になりやすい理由
妊娠中はホルモンバランスの変化により、これまで問題なく使えていたものでも、肌が急に反応を起こすことがあります。特に頭皮や顔まわりは刺激を受けやすく、かゆみや赤みなどのトラブルにつながるケースもあります。
こうした変化は個人差が大きいため、必ずしもすべての妊婦さんに当てはまるわけではありません。しかし、カラー剤やパーマ液などに含まれる成分が原因で肌トラブルを起こすリスクはゼロではないため、使用前にパッチテストを行っておくとより安心です。また、施術当日は肌の状態や体調をよく観察し、少しでも不安を感じた場合は無理をしないようにしましょう。
髪を染めるのを避けた方がよい時期とは?
妊娠中は、時期によって体と赤ちゃんの状態が大きく変化していきます。特に妊娠初期は、赤ちゃんの器官が形成される大切な時期です。この時期は薬剤や香りなどに敏感になることが多いため、カラーリングなどの施術は避けた方がよいとされています。
また、つわりが強い時期や体調が安定しない日が続いている場合も、無理に美容院に行かないことが大切です。妊娠中期以降で体調が安定しているときに、短時間で済む施術を選ぶなど、負担を軽減できる工夫を取り入れるとよいでしょう。もしカラーをする場合は、施術前に担当医と相談し、美容師にも事前に妊娠中であることを伝えておくことがおすすめです。
妊娠中に安心して髪を染める方法は?
妊娠中も、髪の色やスタイルを整えることで、気持ちが前向きになることがあります。ただし、体の変化が大きいこの時期は、なるべく安心できる方法を選ぶことが大切です。ここでは、市販品や美容室での施術、自然派の選択肢など、妊娠中でも無理なく髪を染められる方法と、それぞれの注意点をまとめていきます。
市販のヘアカラー剤は使っても平気?
市販のヘアカラー剤には、ジアミン系の酸化染料や過酸化水素など、頭皮に刺激を与える成分が含まれていることがあります。妊娠中は肌が敏感になりやすく、アレルギー反応やかぶれを起こすリスクが高まるため、使用には注意が必要です。特に、妊娠初期は体調が不安定な時期でもあるため、使用を控えることが望ましいでしょう。
また、自分で作業する場合、長時間同じ姿勢を保ったり、腕を上げ続ける負担も小さくありません。安全面を考えると、妊娠中は市販のカラー剤を避け、専門の美容師に任せる方が安心です。
美容室で染める際に注意すべきこと
美容室でのカラーリングは、プロの技術によって頭皮への負担を軽減できる場合があります。しかし、使用する薬剤の成分や施術時間など、体調に影響を与える要因も考慮する必要があります。施術前には、妊娠中であることを美容師に伝え、体調に配慮した対応をお願いしましょう。また、長時間の施術が負担になることもあるため、体調に応じて無理のない範囲で行うことが大切です。
ナチュラル志向の方に|ヘナの利点と気をつけたい点
ヘナは植物由来の天然染料で、化学成分を含まないため、妊娠中でも比較的安心して使用できるとされています。髪にツヤを与え、頭皮を健やかに保つ効果も期待できます。ただし、製品によっては添加物が含まれている場合もあるため、成分表示を確認し、純度の高い製品を選ぶことが重要です。また、初めて使用する際は、パッチテストを行い、アレルギー反応が出ないか確認しましょう。
施術前には必ず医師と美容師に相談を
妊娠中の体調は日によって変化しやすく、本人が大丈夫だと感じていても、思わぬタイミングで不調を感じることがあります。カラーリングを検討する際には、必ず担当の産婦人科医に相談し、問題がないか確認しておくことが安心につながります。
あわせて、美容室にも妊娠中であることを事前に伝えることで、座り方や施術内容への配慮が可能になります。施術当日だけでなく、事前の段取りから協力を得られるよう、余裕を持ったスケジュールで準備するのが理想です。相談と準備をしっかり行うことで、安心して髪を整えることができるでしょう。
妊娠期のヘアスタイル、どう整えると安心?
妊娠中は体調や生活リズムの変化に加え、これまで気にならなかったことが負担に感じることもあります。髪型もその一つで、思うようにセットできなかったり、乾かす時間が長く感じたりする場面もあるかもしれません。ここでは、妊娠中から産後までを見据えた、無理なく整えられるヘアスタイルの考え方をご紹介します。
出産後も見据えたヘアスタイルに
妊娠中に髪型を整えるときは、産後の生活も考えておくと安心です。赤ちゃんが生まれた直後は、授乳やおむつ替えなどで時間に追われることが多くなります。特に最初の数カ月は、自分の髪にじっくり向き合う余裕がないと感じる方が多いようです。
そのため、髪が顔にかからない長さや、結んでまとめやすい形を選んでおくと、出産後の慌ただしい時期でも気持ちよく過ごせます。長さを大きく変えなくても、前髪や毛先のデザインを少し工夫するだけで、扱いやすさはぐっと変わります。美容師に「産後も扱いやすいようにしたい」と伝えておくと、生活に寄り添った提案が受けられるはずです。
髪色は自然なトーンで落ち着いた印象に
妊娠中にヘアカラーをする場合は、なるべく自然な色味を選ぶと、メンテナンスの回数を減らすことができます。明るいトーンや鮮やかなカラーは、根元の伸びが目立ちやすく、頻繁なカラーリングが必要になることもあります。
それに対して、地毛に近いナチュラルなブラウンやダークカラーは、伸びてきた部分との境目が目立ちにくく、時間が経っても違和感が出にくいのが特徴です。特別な事情がなければ、無理に色味を変えるよりも、長く保ちやすい自然なカラーを選ぶ方が、妊娠中も産後も心にゆとりを持って過ごせるでしょう。
お手入れしやすい髪型にするのも一つの方法
髪を整える時間や気力が足りないときでも、きちんと感が出せる髪型は、妊娠中の忙しい日々に助けになります。たとえば、乾かすだけでまとまりやすいボブやセミロング、結ぶだけで形になるミディアムレイヤーなどが挙げられます。
普段からアイロンやスタイリング剤を使わない方にとっては、仕上げに手をかけなくても自然に落ち着くスタイルがあると、気持ちにも余裕が持てるようになります。また、髪の量が多くて扱いにくい場合は、すいてもらうだけでも日々のドライヤー時間が短縮されます。無理なく続けられるヘアスタイルを選ぶことは、自分をいたわる一つの工夫といえるでしょう。
妊娠中の髪染めに迷ったときの考え方
妊娠中に髪を染めたいと思っても、「本当に大丈夫かな」と不安になる方は少なくありません。赤ちゃんへの影響、体への負担、体調の変化など、気になることがたくさんある時期です。ここでは、そんな迷いを抱えたときに、どのように自分の気持ちと向き合えばよいのか、安心して選択できるヒントをお伝えします。
不安や迷いは誰にでもあること
妊娠中は、ちょっとしたことでも気になったり、不安になったりしやすいものです。特に髪を染めることに対して、「赤ちゃんに悪い影響があるのでは」と感じる方は多くいらっしゃいます。
その気持ちはとても自然なものです。なぜなら、日々変化する自分の体と向き合いながら、大切な命を育んでいるからこそ、選ぶことすべてに慎重になるのは当然だからです。まわりの意見やSNSの情報に迷うときは、一度立ち止まって、自分の体調や気持ちを最優先に考えてみましょう。誰かと違う選択になったとしても、それは間違いではありません。
染めないという選択も、心と体を守る方法
髪を染めることに対して少しでも不安があるなら、「今は染めない」という決断も、十分に意味のある選択です。体調や気分が不安定になりやすい妊娠期には、なるべくストレスを減らすことが大切です。
髪の色に目を向けることが日々あるかもしれませんが、染めるかどうか迷ったときには、どんな選択であっても「今の自分にとって心地よいかどうか」を大切にしてみてください。気になる根元の色は、帽子やヘアバンドなどでやさしくカバーする方法もありますし、ナチュラルな髪色を楽しむという考え方もあります。いつかまた、自分の好きなカラーに戻せる時期が来たときに、思いきり楽しめるよう、今は無理をせず過ごすことが、心にも体にもやさしい時間につながっていくはずです。
まとめ
妊娠中の「髪を染めたい」という気持ちは、決してわがままではありません。でも同時に、「大丈夫かな」と迷ったり、心配になったりするのも自然なことです。大切なのは、赤ちゃんと自分を想う気持ちに、きちんと耳を傾けてあげること。不安を抱えたまま我慢するより、正しい情報と向き合って、自分なりの安心を見つけていく時間を大切にしてほしいと思います。
からだの変化が大きい妊娠期は、これまで通りにいかないことも増えていきます。だからこそ、自分の「こうしたい」を後回しにせず、やさしく受けとめてあげることが、こころの安らぎにもつながっていくはずです。m.i(ミィ)は、そんなデリケートな時期の“しょいこみ期”を、ひとりで抱え込まずに過ごせるよう、そっと寄り添いながらサポートを続けています。