Vol.21

妊娠中に肌が乾燥する原因とは?粉ふきを抑える効果的な対策を紹介【医師監修】

  • 2025.9.9
  • m.i journal vol.21
  • コラム

馬場 敦志さん産婦人科専門医

札幌南高等学校を卒業後、筑波大学医学専門学群医学類を修了。卒業後は勤医協中央病院での初期研修を経て、札幌医科大学 産科婦人科学講座へ入局。その後、留萌市立病院、小樽協会病院、市立函館病院、市立釧路総合病院、NTT東日本札幌病院など、道内の主要医療機関で産婦人科診療に従事。幅広い地域医療の現場で経験を積み、確かな臨床力と丁寧な診療で信頼を集める。現在は、札幌市の「宮の沢スマイルレディースクリニック」院長として、地域に根ざした産婦人科医療を提供。
所属学会:日本産科婦人科学会/日本内視鏡外科学会/日本産科婦人科内視鏡学会

妊娠してから肌が粉をふいたように白くなったり、カサつきが続いたりしていませんか?
これまで使っていたスキンケアでは物足りなく感じる人も多いはずです。

本記事では、妊娠中に乾燥しやすくなる原因を解説しながら、肌トラブルを防ぐための具体的なケア方法を紹介します。
顔や体の粉ふきをおさえるために、今日からできる習慣やアイテム選びのコツもお伝えします。

妊娠中、肌が敏感になりやすい理由

妊娠中は、肌の乾燥を感じやすくなる時期です。これはホルモンバランスや体内環境の変化が重なって起こる自然な反応といえます。肌のうるおいを保つ力が弱まり、ちょっとした刺激でも粉をふいたりかゆみが出やすいです。見た目の変化に不安を感じる方も多いですが、原因を知れば対策もしやすくなります。

ここでは、乾燥肌になりやすい代表的な理由を詳しく解説します。

ホルモンバランスの変化による影響

妊娠すると、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌量が大きく変化します。このホルモンの変動が、肌の水分量や皮脂バランスに影響を与えるため、乾燥しやすくなってしまうのです。

特に今まで乾燥肌ではなかった人でも、粉ふきやつっぱり感を感じることがあります。肌質の変化は一時的なものですが、放っておくと悪化する場合もあるため、早めの対策が大切です。

水分や皮脂の減少

妊娠中は体の水分が赤ちゃんへ優先的に送られるため、自分の肌への水分補給が後回しになりがちです。そのうえ皮脂の分泌も減るため、肌の表面を守るバリアが弱まりやすくなります。この状態では、肌が外気の乾燥や衣類との摩擦に弱くなり、粉ふきやかゆみを引き起こす原因になります。こまめな保湿と水分補給で、うるおいを補うケアが求められます。

血行不良による代謝低下

お腹が大きくなると運動量が減ったり、姿勢が偏りがちになったりして、全身の血流が滞りやすくなります。血行が悪くなると肌のターンオーバーが乱れ、古い角質が残ったままになりがちです。その結果、粉ふきのような見た目やごわつきにつながります。軽いストレッチや湯船で温まるなど、血流を促す意識を持てば肌の代謝をサポートできます。

バリア機能が低下し外部刺激に弱くなる

妊娠中は肌のバリア機能が低下し、乾燥や紫外線、ちょっとした摩擦にも敏感になります。特に皮脂や角質層の働きが弱まるので、水分が逃げやすくなり、かゆみや粉ふきの原因となるのです。肌を外部刺激から守るには、やさしい洗浄や刺激の少ない素材の衣類を選ぶことが効果的です。外からの刺激を減らすのも、乾燥肌対策の一環になります。

妊娠中の乾燥が引き起こす肌トラブル

妊娠中は肌のうるおいが不足しやすく、さまざまな肌トラブルが起こりやすくなります。乾燥が進むと、かゆみや赤み、粉ふきといった不快な症状が出てくるだけでなく、肌のバリア機能が弱まり外部刺激にも反応しやすくなります。肌の状態が不安定になれば、これまで使えていたスキンケアが合わなくなることも少なくありません。症状を和らげるためには、早めの対処が重要です。

かゆみや赤み

乾燥によって皮膚のバリア機能が弱まると、ちょっとした刺激にも敏感になります。その結果、かゆみや赤みといった炎症が起きやすくなります。

特に入浴後や就寝時に症状が強く出ることがあり、ついかいてしまうと悪化することも……実際、肌をかいて傷ができたり色素沈着が残るケースもあります。保湿で肌の乾燥を防ぐだけでなく、肌にやさしい素材の衣類を選ぶのも大切です。

ニキビ・吹き出物

妊娠中はホルモンの影響で皮脂のバランスが乱れやすくなります。乾燥しているのに部分的に皮脂が過剰になれば、毛穴が詰まってニキビや吹き出物の原因になります。

フェイスラインやデコルテにできやすく、メイクやマスクの刺激で悪化することもあります。洗顔後はしっかり保湿をして、肌を清潔に保つことがトラブル予防のポイントです。

妊娠線

急激なお腹のふくらみに皮膚がついていけず、妊娠線ができることがあります。肌の乾燥が進んでいると、柔軟性が低下してひび割れのようになりやすくなります。

特にお腹や太もも、バストなどは注意が必要です。妊娠線を完全に防ぐことは難しいですが、保湿ケアを続けることで皮膚の柔らかさを保ち、目立ちにくくする効果が期待できます。

肌のハリや弾力の低下

乾燥状態が続くと、肌の内側にある水分が減ってハリがなくなってきます。

顔や首まわりは、しぼんだような印象になりがちです。これはコラーゲンやエラスチンの働きが落ちるのも一因です。鏡を見るたびに疲れた表情に見えると、気分まで沈んでしまうこともあります。しっかり保湿して肌にうるおいを与えれば、ふっくらとした質感を保ちやすくなります。

粉ふきなど見た目の変化

乾燥が進行すると、顔や脚などの肌表面に白い粉をふいたような状態になることがあります。寒い時期やエアコンの効いた室内ではこの傾向が強まります。粉ふきは見た目にも目立ちやすく、メイクのりも悪くなるためストレスの原因の1つになっています。洗顔後すぐの保湿や、重点的な部位ケアを習慣にすると、見た目の違和感もやわらぐでしょう。

妊娠中の乾燥対策として取り入れたい日常ケア

妊娠中の乾燥には、毎日のちょっとした習慣が大きな助けになります。特別なケアをしなくても、肌にやさしいアイテム選びや生活環境を整えるだけで、粉ふきやかゆみの軽減が期待できます。

ここでは、すぐに取り入れやすい5つのケア方法をご紹介します。続けやすい方法を見つけて、肌の調子を整えていきましょう。

保湿力の高いスキンケアアイテムを選ぶ

乾燥を防ぐには、肌のうるおいを長時間キープできるスキンケアが効果的です。保湿力の高いクリームやオイルを選ぶと、粉ふきやつっぱり感がやわらぎやすくなります。

特にセラミドやヒアルロン酸配合のものは、水分の蒸発を防ぐ働きがあります。乾燥しやすい部位(脚やお腹など)を重点的にケアすれば、肌全体のコンディションが整いやすくなります。入浴後や洗顔後など、肌がまだ水分を含んでいるタイミングで塗るとより効果的です。べたつきが少ないタイプを選ぶと、日中も快適に使えます。

こまめな水分補給

肌のうるおいを保つには、外からの保湿だけでなく、体の中からの水分も大切です。妊娠中は血液量が増え、汗もかきやすいため、いつもより多めの水分補給が必要になります。1回にたくさん飲むのではなく、こまめに少しずつ飲むのがコツです。起床後や入浴後、のどが渇く前のタイミングを意識すると、自然と習慣にしやすくなります。

肌をこすらずやさしく洗う

洗顔や入浴時にゴシゴシこすると、肌表面のうるおいが失われてしまいます。洗うときは泡立てた洗浄料でやさしくなでるようにし、タオルで拭くときもポンポンと押さえるようにしましょう。ボディタオルやスクラブの使用は控えるのがおすすめです。乾燥が気になるときこそ、「洗いすぎない」ことが肌を守るコツになります。

衣類やシーツによる摩擦対策

肌への刺激を減らすには、直接ふれる衣類や寝具の素材にも気を配りましょう。綿などの柔らかい素材は摩擦が少なく、肌にやさしくフィットします。洗剤の成分が刺激になる場合もあるので、無添加タイプや赤ちゃん用洗剤を試してみるのも一つの手です。衣類の縫い目やタグが当たる場所に注意するだけでも、かゆみや粉ふきが軽減される場合があります。

加湿器の使用や室内湿度の管理

空気が乾燥していると、どれだけ保湿しても肌から水分が逃げやすくなります。

特に冬場やエアコンの効いた室内では、湿度が40%以下になることもあるため、加湿器を使って50〜60%の湿度を保つと、肌への負担が軽減されます。洗濯物の室内干しや、濡れタオルをかけるだけでも湿度アップに効果的です。空間ごと整えれば、肌も過ごしやすくなります。

妊娠中から産後まで続けたい肌ケア習慣

肌ケアは、妊娠中だけでなく産後まで継続すれば、肌トラブルの予防につながります。妊娠中はもちろん、出産後もホルモンバランスの乱れや育児による生活リズムの変化で、肌は敏感になりがちです。一時的な対策だけでなく、長く続けられる習慣を持てば、健やかな肌を保つためのポイントとなります。

ここでは、妊娠期から意識したい肌ケアの考え方をご紹介します。

妊娠期のスキンケアは将来の肌を守る基礎になる

妊娠中の肌ケアは、その時の乾燥対策だけでなく、数年後の肌状態にも影響します。肌が敏感になる時期にどうケアするかが、将来のしわやたるみの予防につながります。特に粉ふきやかゆみを放置してしまうと、摩擦によってダメージが蓄積されやすいです。妊娠中だからこそ、やさしく丁寧なケアを続ければ、健やかな肌の土台を作ることができます。

産後のホルモン変化でも肌が不安定になりやすい

出産後はホルモンバランスが急激に変化し、肌荒れや乾燥が再び気になりやすくなります。さらに育児の疲れや睡眠不足も重なり、肌の回復力が落ちがちです。この時期に急にスキンケアを変えると、かえって刺激になることもあります。妊娠中から肌に合ったケアを見つけておくと、産後も迷わず続けやすくなり、肌の安定にもつながります。

長期的に見た肌トラブル予防の意識を持つ

目の前の粉ふきやかゆみをケアするだけでなく、先のことも考えたスキンケアを意識しましょう。肌は年齢や環境によって変化していくため、一時的な対策だけでは追いつかなくなる場合があります。保湿や摩擦対策など、基本的なケアを日常に取り入れれば、トラブルの起こりにくい肌が育ちます。継続できる方法を選び、無理のないペースで習慣化することがポイントです。

まとめ

肌が乾いてつっぱる感覚。
粉をふいたような白さに、ふと気持ちが沈んでしまう日もあるかもしれません。

でも、それはあなたの体ががんばっている証でもあります。
赤ちゃんを育てながら、変わりゆく自分の肌と向き合うことは、とても尊く、やさしい選択です。

小さなケアでも、積み重ねればきっと、肌もこころも少しずつ整っていきます。
m.i(ミィ)は、そんなあなたの日々にそっと寄り添いながら、安心して続けられるケアのかたちをこれからもお届けしていきます。

今のあなたに合ったやさしさが、毎日の中に見つかりますように。