Vol.68

生理前のニキビがひどい…そんなときに知りたい原因と肌ケア【医師監修】

  • 2026.9.11
  • m.i journal vol.68
  • コラム

西野 枝里菜さん産婦人科専門医

東京大学理学部生物学科を卒業後、同大学薬学部薬科学専攻修士課程を修了。名古屋大学医学部医学科を卒業し、JCHO東京新宿メディカルセンターで初期研修を行う。その後、都立大塚病院で産婦人科後期研修を修了し、久保田産婦人科病院に勤務。基礎科学から臨床医学に至る幅広い学びと経験を活かし、産婦人科医として女性の健康を支えている。
資格:産婦人科専門医/母体保護法指定医/日本医師会認定産業医

毎月のように生理前になるとニキビがひどい状態になり、鏡を見るたびに気分が沈んでしまうことはありませんか。この記事では、生理前や生理中、そして産後の肌変化の理由と、今日からできる簡単なケア方法をご紹介します。この記事を読むことで、ゆらぎやすい時期の肌と心を少しでも穏やかに保つヒントが得られますように。

生理前にニキビがひどくなりやすい理由

生理が近づくにつれて、あごや口周りにぽつぽつとニキビができやすくなる方は少なくありません。妊娠中は生理がお休みになりますが、妊娠前からこのトラブルに悩まされていた方も多いでしょう。これには、女性ホルモンの変化が深く関わっています。まずは、なぜこの時期に肌が荒れやすくなるのか、その背景を見ていきましょう。

黄体ホルモンが皮脂の分泌を促すから

排卵後から生理前までの期間は、プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの分泌が増加します。このホルモンは妊娠の準備を整える大切な役割を持つ一方で、皮脂の分泌を活発にする働きも持ち合わせています。そのため、毛穴に皮脂が詰まりやすくなり、結果としてニキビがひどい状態になりやすいと言えるでしょう。体が自然なサイクルを繰り返している証拠でもあるため、あまりご自身を責めないでくださいね。

肌のバリア機能が低下して敏感になる時期だから

生理前の肌は、水分を保つ力が弱まり、バリア機能が低下しがちです。普段なら気にならないわずかな刺激でも、赤みや炎症につながる可能性があります。衣服の擦れや髪の毛が触れるだけでも、ニキビを悪化させる要因になることも。この時期は「肌がとてもデリケートになっているサイン」と受け止め、いつも以上にやさしく扱うことを心がけてみましょう。

生理中の肌はどう変わる?

生理前だけでなく、いざ生理が始まってからの肌の状態も気になりますよね。出血が始まるとホルモンバランスが再び大きく変わり、肌を取り巻く環境も変化していきます。生理中の肌がどのような状態に置かれているのかを知ることで、その時期にふさわしいスキンケアや過ごし方が見えてくるかもしれません。

ホルモンが減少し、乾燥しやすくなる

生理が始まると、皮脂の分泌を促していたプロゲステロンも、肌の潤いを保つエストロゲンも急激に減少します。その結果、肌は水分を抱え込む力が弱まり、とても乾燥しやすい状態になります。ニキビは皮脂が多いからできると思われがちですが、実は乾燥によって毛穴周りが硬くなり、かえって皮脂が詰まりやすくなる場合もあります。生理中こそ、丁寧な保湿を意識したいですね。

血行不良で肌のターンオーバーが乱れる

生理中は体温が下がりやすく、冷えや血行不良を感じる女性も多いでしょう。血流が滞ると、肌の細胞に十分な栄養や酸素が行き渡りにくくなります。すると、古い角質が剥がれ落ちて新しい肌に生まれ変わる「ターンオーバー」のサイクルが乱れがちに。ニキビの治りが遅く感じたり、肌がくすんで見えたりするのは、こうした体の内側の働きが影響していると考えられます。

産後にニキビが目立ちやすくなる背景

無事に出産を終え、ほっとしたのもつかの間。産後に急にニキビが増えて戸惑うママも多くいらっしゃいます。妊娠中はお休みしていた生理が再開し、それに伴って肌のコンディションが乱れることも。産後の肌荒れには、出産という大仕事を終えた体ならではの、いくつかの重なり合う理由が存在しています。

出産による急激なホルモンバランスの変化

妊娠中は豊富に分泌されていた女性ホルモンが、出産を機に一気に減少します。この急激な落差に体が追いつかず、一時的にホルモンバランスが大きく崩れてしまうのです。さらに、産後に生理が再開すると、再び「生理前のニキビがひどい」というサイクルが戻ってくることもあります。体が元の状態に戻ろうと一生懸命に働いている過渡期ですので、焦らずに見守ってあげましょう。

慣れない育児の疲れや睡眠不足の影響

赤ちゃんのお世話で夜中も何度も起きたり、常に気を張っていたりと、産後はどうしても睡眠不足や疲労が蓄積しやすくなります。睡眠が足りないと、肌の修復を助ける成長ホルモンの分泌が滞り、ニキビが治りにくくなる原因につながります。また、自分のスキンケアに時間をかける余裕がなくなり、どうしても肌のお手入れが後回しになりがちなことも、肌荒れを招く一因かもしれません。

悪化しやすい生活習慣

生理前や産後など、ホルモンの影響でただでさえニキビができやすい時期に、何気なく行っている習慣が症状を長引かせているかもしれません。良かれと思ってやっていることや、無意識のクセを見直すだけでも、肌への負担はぐっと減らすことができます。ここでは、肌を守るために避けたいポイントを確認してみましょう。

ついつい触ってしまう・潰してしまう

鏡を見てニキビを発見すると、どうしても気になって指で触れたり、無理に押し出そうとしたりしていませんか。手には目に見えない雑菌が多く付着しており、触ることで炎症を悪化させる可能性があります。また、無理に潰すとニキビ跡として色素沈着が残ってしまうことも。気になる気持ちはわかりますが、できるだけ触れずにそっとしておくのが一番のケアになります。

洗顔のしすぎや強い摩擦

皮脂や汚れを落とそうとして、1日に何度も洗顔をしたり、ゴシゴシと力を入れて洗ったりするのは逆効果になる場合があります。必要な皮脂まで洗い流してしまうと、肌は乾燥から身を守るために余計に皮脂を分泌しようと働きかけます。また、タオルで強く顔を拭く摩擦も、デリケートな肌には大きなダメージに。清潔に保つことは大切ですが、洗いすぎには注意が必要でしょう。

毎日のスキンケアで意識したいこと

ゆらぎやすい時期の肌には、負担をかけにくいお手入れを意識したいものです。高価な化粧品を新しく揃える必要はありません。いつものアイテムを使いながら、洗い方やなじませ方を少し変えるだけで、肌は少しずつ応えてくれるはずです。今日から無理なく始められる、基本的なスキンケアのコツをお伝えします。

たっぷりの泡でこすらずに洗い流す

洗顔をするときは、洗顔料をしっかりと泡立てて、手と顔の間に泡のクッションを作るようにして洗うのがポイントです。指の腹が直接肌に触れないくらいの力加減で、泡を転がすようにやさしく洗いましょう。すすぎには、熱いお湯ではなく、人肌よりも少しぬるめの32〜34度くらいのお湯が適しています。洗顔後は、清潔なタオルで顔を包み込むようにして水分を吸い取るのがおすすめです。

保湿は丁寧に、水分と油分のバランスを整える

ニキビがあるからといって、化粧水だけで済ませて乳液やクリームを避けるのは、乾燥を招きかえってニキビを悪化させる恐れがあります。まずは化粧水でたっぷりと水分を与え、そのあとに少量の乳液などで薄いフタをしてあげることで、水分と油分のバランスが整います。ベタつきが気になる場合は、ニキビができにくい処方(ノンコメドジェニックテスト済みなど)のアイテムを選ぶのも良い選択かもしれません。

食事・睡眠・ストレスとの付き合い方

肌は内臓の鏡とも言われるように、外側からのケアだけでなく、内側からのアプローチも同じくらい大切です。とはいえ、仕事や育児で忙しくて思い通りに過ごせない日も多いはず。完璧を目指すのではなく、「今日はこれができたから花丸」というように、できる範囲で生活を整えていく心がけが、結果として健やかな肌を育む助けになります。

ビタミンを取り入れたバランスのよい食事を摂る

皮脂の分泌をコントロールし、肌のターンオーバーを助けるためには、ビタミンB群やビタミンCを意識して摂るのがおすすめです。豚肉、納豆、ほうれん草、ブロッコリーなどの食材は、日々のメニューに取り入れやすいですね。甘いお菓子や脂っこい食事は皮脂を増やしやすいので、少しだけ控えてみましょう。つわりなどで食事が進まない時は、食べられるものを優先して無理をしないことが一番です。

短時間でも質の良い睡眠で肌を休ませる

まとまった睡眠時間を確保するのが難しい時期は、少しでも睡眠の質を高める工夫をしてみましょう。寝る前のスマートフォンはブルーライトが交感神経を刺激してしまうため、お布団に入る少し前には画面を伏せておくのが理想です。また、温かいお茶を飲んだり、好きな香りを嗅いだりしてリラックスする時間を作るだけでも、深い眠りに入りやすくなります。赤ちゃんと一緒にお昼寝をして、体を休めることも立派なスキンケアの一つです。

受診を考えたいサイン

生活習慣やスキンケアを見直しても、どうしてもニキビが改善しないときや、悪化して痛みを伴うときは、一人で抱え込まずに専門家の力を借りることも大切です。皮膚科を受診することは決して大げさなことではありません。「こんなことで受診してもいいのかな」と迷う前に、自分の肌と心を守るための選択肢として持っておきましょう。

痛みを伴う大きなニキビが増えてきたら

赤く腫れ上がって触れなくても痛いニキビや、中に膿が溜まって大きく化膿しているニキビが複数ある場合は、セルフケアだけでは限界があるかもしれません。炎症が強く長引くほど、治った後にクレーターのようなニキビ跡が残ってしまうリスクも高まります。症状がひどいと感じたら、無理に自宅でどうにかしようとせず、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。

不安なときは医師に相談を

皮膚科では、現在の体調や生活状況を伝えることで、一人ひとりに合った治療やケアについて相談しやすくなります。もし、妊娠中や授乳中であれば、そのことも忘れずに医師へ伝えましょう。今の状態に合わせて使用できる薬や治療法を提案してもらえます。「そのうち落ち着くかも」と抱え込んでいると、気持ちまで疲れてしまうこともあるでしょう。医師に話を聞いてもらうことで、「この向き合い方で大丈夫」と安心できる場合もあります。心と肌の負担を少し軽くするためにも、必要なときは専門家に相談してみましょう。

まとめ

生理前にニキビがひどい状態になったり、妊娠・産後と目まぐるしく肌の調子が変わったりするのは、あなたの体がホルモンバランスの変化に一生懸命適応しようとしているサインです。一時的なものであることが多く、産後の生活リズムが整うにつれて自然と落ち着いてくることもあります。だからこそ、「自分の手入れが悪いからだ」とご自身を決して責めないでください。

m.i(ミィ)は、肌荒れに落ち込むあなたの心に、そっと寄り添いたいと考えています。毎日やるべきことがたくさんある時期だからこそ、自分のためのケアは無理のない範囲で重ねていけたら十分です。思うようにできない日があっても、気にしすぎなくて大丈夫。肌も気持ちも、少しずつ穏やかに整っていきますように。