妊娠初期の肌荒れがひどい…その原因と整える生活習慣【医師監修】
- 2025.10.1
- m.i journal vol.29
- コラム

高藤 円香さん皮膚科専門医
2013年、防衛医科大学校を卒業後、臨床研修を修了。大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修を重ね、皮膚科専門医を取得。現在は自衛隊阪神病院に勤務し、皮膚科医として地域の一般診療を担っている。アトピー性皮膚炎や乾癬をはじめとした皮膚疾患に幅広く対応し、執筆や監修活動にも取り組んでいる。
所属学会:日本皮膚科学会(専門医)/日本色素細胞学会
妊娠初期に入り、急にニキビや赤みがひどくなって戸惑っている方も多いのではないでしょうか。実は、ホルモンバランスの変化や生活リズムの乱れが重なるこの時期は、肌荒れが起こりやすいタイミングでもあります。とはいえ、原因を正しく理解し、肌にやさしい習慣を少しずつ取り入れることで、肌トラブルは落ち着きやすくなります。この記事では、妊娠初期に起こりがちな肌荒れの原因や特徴、スキンケアのポイント、生活習慣の整え方まで、わかりやすくご紹介します。読み終えるころには、肌への不安がやわらぎ、前向きに過ごすヒントがきっと見つかるはずです。
妊娠初期に肌荒れがひどくなる原因とは
妊娠初期に肌荒れが目立ってくるのは、体の内側で起こっている変化が関係しています。ホルモンバランスの急な変動やつわりによる栄養の偏り、精神的なストレスや睡眠不足などが肌に影響を与えます。これらの要因が重なって、肌のバリア機能が低下したときに、ニキビや乾燥、かゆみといった症状が出やすいです。まずは肌荒れの原因を知り、自分の状態に合った対策を見つけることが大切です。
ホルモンバランスの急激な変化による影響
妊娠初期は女性ホルモンの一つである「プロゲステロン」が急激に増えます。これは赤ちゃんを育てるために欠かせない変化ですが、皮脂分泌を活発にする作用もあるため、毛穴が詰まりやすくなり、ニキビや吹き出物ができやすくなります。また、ホルモンの影響で肌の水分バランスも乱れ、乾燥やかゆみを感じやすくなることもあります。
つわりによる食生活の乱れや栄養不足
つわりが始まると、食べられるものが限られたり、食事そのものがとれなくなることがあります。特にビタミンやたんぱく質、鉄分など、肌の健康を保つために必要な栄養素が不足しがちです。偏った食事が続くと、肌の再生力が落ち、バリア機能も弱まります。無理のない範囲で栄養バランスを意識し、少量でもこまめに栄養をとる工夫が必要です。
ストレスや睡眠不足による肌への負担
妊娠がわかると、体調の変化に加えて心の不安も大きくなります。ストレスを感じたり、眠りが浅くなったりすると、自律神経が乱れて肌の回復力が下がります。睡眠中は肌の修復が進む大切な時間なので、日中にリラックスできる時間をつくるなど、眠る環境を整えて肌へのサポートをしましょう。
妊娠初期に起こりやすい肌荒れの症状
妊娠初期にはホルモンの変化や体調の不安定さから、さまざまな肌トラブルが起こりやすくなります。特に多く見られるのが、ニキビや乾燥、シミなどの症状です。これらは妊娠による一時的な変化であることが多く、過度に不安になる必要はありません。ただし、症状がつらい場合は、体に負担をかけずにできる対策を知っておくと気持ちも軽くなります。
ニキビや吹き出物ができやすくなる
妊娠初期はホルモンの影響で皮脂の分泌が増えます。これにより毛穴が詰まりやすくなり、顔や背中にニキビや吹き出物ができたります。刺激の強いスキンケアは避け、洗顔をやさしく行い、保湿を丁寧にすることが大切です。
肌の乾燥やかゆみが強くなることがある
妊娠中は肌の水分保持力が下がり、乾燥しやすくなる人が多く見られます。肌がカサつくだけでなく、場所によっては粉をふいたようになったり、かゆみを感じたりすることもあります。無意識にかいてしまうと肌を傷つけてしまうため、保湿ケアを早めに取り入れることが大切です。お風呂上がりにすぐ保湿する、衣類の素材を見直すといった対策が効果的です。
シミや色素沈着が目立ちやすくなる
妊娠初期からメラニン色素が増えやすくなり、シミやそばかすが濃くなる人もいます。また、肌の一部に色ムラのような変化が現れることもあります。日焼けしやすい状態になっているため、外出時は帽子や日傘を活用し、室内でもUV対策を心がけると良いでしょう。完全に防ぐのは難しくても、早めのケアで濃くなるのを防ぐことが期待できます。
妊娠中の肌荒れはいつまで続く?
妊娠中の肌荒れは一時的なものですが、その期間には個人差があります。ホルモンの変化が主な原因であり、時期ごとに肌の状態は変ってきます。体調の変化に合わせたスキンケアを取り入れることで、無理なく肌を整えられるでしょう。
妊娠初期:ホルモン変化の影響で肌荒れが始まりやすい
妊娠初期はホルモンバランスが急激に変わるため、肌が不安定になりやすい時期です。特にプロゲステロンの分泌が増えることで、皮脂が多くなり、毛穴の詰まりやニキビの原因になります。また、水分の保持力が下がり、乾燥やかゆみを感じる人も少なくありません。この時期に突然肌荒れがひどくなったと感じる方は多いです。
妊娠中期:肌の状態が安定するケースもある
妊娠中期になるとホルモンの変化が少し落ち着き、体調も安定しやすくなります。それに伴って、肌トラブルが軽減されるケースも見られます。ただし、すべての人がこの時期に落ち着くわけではないため、引き続き丁寧なスキンケアが大切です。
妊娠後期:再び肌トラブルが出やすくなることもある
出産が近づく妊娠後期は、再びホルモンの変動が起きやすく、肌が敏感になる人もいます。お腹が大きくなり寝苦しくなって睡眠の質が下がると、肌の回復が遅れることがあります。また、むくみや便秘などの影響も肌に表れやすいです。肌荒れが再発したときは、無理せずできる範囲で肌にやさしいケアを続けていきましょう。
出産後:ホルモンの安定とともに肌荒れが落ち着く可能性がある
出産後はホルモンバランスが少しずつ整っていくため、肌トラブルが改善されるケースが多いです。ただし、育児によるストレスや睡眠不足が重なると、肌の調子がすぐには戻らないこともあります。授乳中でも使える保湿ケアなどを取り入れ、ゆっくりと回復を目指しましょう。無理に治そうとせず、肌の変化を受け入れるのも大切です。
妊娠初期の肌荒れをやわらげる生活習慣
肌荒れを落ち着かせたいときは、スキンケアだけでなく生活習慣の見直しも欠かせません。妊娠初期は体のバランスが大きく変わる時期なので、肌の調子も揺らぎやすくなります。睡眠・食事・紫外線対策といった基本的な習慣を整えれば、肌が持つ本来の回復力を引き出しやすくなります。
質の良い睡眠時間を意識して確保する
肌の修復は寝ている間に進むため、睡眠の質は肌トラブルに直結します。妊娠中は眠りが浅くなりやすく、思うように休めないこともありますが、寝る前のスマホを控えたり、部屋の明かりを落としたりするだけでも違いが出ます。入浴で体を温めるのも眠りの質を高めるのに効果的です。自分なりのリラックス方法を見つけるのが、心と肌の安定につながります。
栄養バランスの整った食事を心がける
肌を整えるには、外からのケアだけでなく内側からの栄養も欠かせません。つわりで食事が偏りがちになる時期ですが、無理のない範囲で栄養を意識することが大切です。ビタミン類・たんぱく質・鉄分などは肌に必要な栄養素です。食べやすい野菜スープや豆腐、卵などをうまく取り入れると、肌の調子も整いやすくなります。少量ずつでも継続することがポイントです。
紫外線対策を行い肌への刺激を減らす
妊娠中はメラニンが増えやすくなり、紫外線による肌トラブルが起きやすくなります。特にシミや色素沈着は、紫外線を浴びれば濃くなりやすいため注意が必要です。外出時は帽子や日傘を使い、日焼け止めも低刺激なものを選びましょう。室内でも窓際に長くいる場合は対策が必要です。肌に負担をかけない範囲で、できることから始めてみてください。
肌にやさしいスキンケアのポイント
妊娠初期はホルモンバランスが不安定になり、肌が敏感に傾きやすくなります。この時期は普段以上にスキンケアの見直しが大切です。強い成分や香りのある化粧品は刺激になることがあるため、肌にやさしいアイテムや使い方を意識すれば、トラブルを最小限に抑えられます。無理なく続けられるケアを取り入れましょう。
低刺激で無香料のアイテムを選ぶ
妊娠初期は肌が刺激に敏感になるため、スキンケア用品の選び方が重要です。特に「無香料・アルコールフリー・合成着色料なし」など、肌への刺激を減らした処方のものを選びましょう。化粧水や乳液に含まれる添加物が少ないと、肌トラブルのリスクも抑えられます。また、肌にやさしいだけでなく、毎日使い続けやすい使用感かどうかも大切なポイントです。まずは試供品やミニサイズで試してみると安心です。
洗顔と保湿の方法を見直す
毎日のスキンケアでは、洗顔と保湿の「やり方」も見直してみましょう。
・洗顔はゴシゴシこすらず、たっぷりの泡でやさしく洗うのが基本です。
・お湯の温度はぬるま湯(32〜34℃程度)を目安に。
・洗顔後は、タオルで押さえるように水気を取るのがポイントです。
そのあとすぐに保湿を行えば、水分の蒸発を防ぎ、乾燥やかゆみの予防にもつながります。「時間をあけずに保湿」は妊娠中の肌ケアの基本です。
肌に触れる衣類やタオルに気を配る
意外と見落としがちなのが、肌に直接ふれる衣類やタオルの素材や質感です。化学繊維の衣類やごわついたタオルは、知らないうちに肌への刺激になっていることがあります。綿素材のやわらかい服を選んだり、タオルは柔軟剤を使わずにふんわりと仕上げるのがおすすめです。毎日使うものだからこそ、肌にやさしい素材を意識して選ぶようにしましょう。
妊娠初期の肌荒れに悩む心のケア
肌荒れが続くと、鏡を見るたびに落ち込んでしまうこともあるかもしれません。妊娠初期はホルモンの影響で、気持ちの浮き沈みが起こりやすい時期。肌の変化に加えて、心まで不安定になるのは自然なことです。そんなときは、どうか自分を責めず、ゆっくり心を休ませる時間をとってみてください。前向きになれない日があっても大丈夫です。無理に前向きになろうとせず、休む・話す・書き出すなど、自分なりのリセット法を見つけましょう。例えば、信頼できる人に肌の悩みを話すだけでも、心の負担が和らぐことがあります。心が少し軽くなれば、肌との向き合い方にもゆとりが生まれてきます。
まとめ
妊娠初期の肌荒れは、体の内側が大きく変わっている証でもあります。
急な変化に戸惑うのは当然のこと。そんなときこそ、自分にやさしい選択を重ねていくことが大切です。
強いケアで押さえつけるのではなく、肌と心に負担をかけない方法を選ぶ。
その積み重ねが、ゆらぎやすい肌を内側から整えてくれます。
m.i(ミィ)は、変化の中にある“あなたらしさ”を守れる存在でありたいと願っています。
肌も気持ちも、ゆっくり整えていきましょう。