産後に髪が抜けるのはいつまで?時期・原因・ケア方法を解説【医師監修】
- 2025.8.28
- m.i journal vol.17
- コラム

松澤 宗範さん形成外科医・美容医療専門医
近畿大学医学部を卒業後、慶應義塾大学病院で初期臨床研修を修了し、同病院形成外科に入局。佐野厚生総合病院や横浜市立市民病院、埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科での臨床経験を経て、銀座美容外科クリニック新宿院の院長に就任。その後、青山メディカルクリニック院長として美容医療の指導・診療にあたり、2024年7月より肌管理クリニックにて最新の再生医療と抗加齢医療を提供している。形成外科、再生医療、美容医療、予防医療、抗加齢医学を研究分野とし、日本顔面口腔医科学会専門医・再生医療認定指導医、世界美容外科学会専門医の資格を有する。現在は肌管理クリニックおよび慶應義塾大学病院形成外科に所属し、外科領域から皮膚科・美容皮膚科まで幅広い視点で、安全かつ効果的な治療法の開発と普及に尽力している。
出産後、髪の抜け毛が増えて驚いた…そんな声をよく耳にします。ホルモンバランスの変化や育児の疲れなど、心と体のゆらぎが重なる時期。いつまで続くの?どう対処すればいい?そんな疑問に、医師の見解をもとに丁寧にお答えします。
産後に髪が抜けるのはなぜ?いつまで続くの?
出産後しばらくしてから、髪がごっそり抜け始めて驚いたという声は少なくありません。急な変化に戸惑うかもしれませんが、実はこれは多くの人に起こる自然な変化です。
ここでは、抜け毛の原因や続く期間について紹介していきます。
ホルモンバランスの変化とヘアサイクル
出産後の抜け毛は、女性ホルモンの変化が関係しているといわれています。妊娠中は、エストロゲンの分泌が増えることで髪が抜けにくい状態が保たれます。ところが、出産を終えるとこのホルモンの分泌量が減少するため、そのタイミングで一気に髪が抜けるように感じることがあります。
このようなホルモンのゆらぎが、髪の生え変わりの周期(ヘアサイクル)に影響し、一時的に抜け毛が増えることにつながると考えられています。
抜け毛が始まる時期と、自然におさまるまでの目安
多くの方は、産後2〜3か月頃から抜け毛の変化を感じ始めます。この時期は、ホルモンのバランスが大きく変化している真っ只中です。
特に、赤ちゃんのお世話が始まり、睡眠や栄養も不規則になりがちなタイミングでもあります。ストレスや疲労も重なることで、抜け毛の量が増えたように感じられることもあります。ただし、通常は半年〜1年ほどかけて徐々におさまっていくのが一般的です。
「いつまで続くか」は個人差も。心配なときの目安とは?
抜け毛の期間や量には大きく個人差があり、髪質や体質、生活習慣によっても異なるため、一概に「○か月で回復する」とは言い切れません。ただし、たとえ1年以上経っても抜け毛が改善せず地肌が透けて見える状態が続いたり、地肌に赤みやかゆみ、炎症が生じたり、円形状の脱毛斑が現れたりする場合は、早めに皮膚科や専門クリニックを受診することをおすすめします。具体的な対処法が見つからなかったとしても、相談することで気持ちが少し軽くなるかもしれません。
産後の抜け毛がつらい…よくあるお悩み
出産後、髪が思うようにならず戸惑う方は少なくありません。特に抜け毛が増えると、日々のヘアスタイルや気分に影響が出ることもあります。ここでは、よく聞かれる産後の髪悩みとその背景を丁寧にまとめました。
分け目や生え際の薄毛が気になる
抜け毛が目立ちやすいのは、分け目や生え際です。特に前髪まわりやこめかみなど、目につきやすい部分に髪の減りを感じると、不安が大きくなることもあるでしょう。髪の密度が変わると、ヘアスタイルがきまりにくくなったり、ボリューム感のなさが強調されたりすることがあります。いつも通りにセットしても、うまくまとまらず、外出前に悩んでしまう方も多いようです。
髪のボリュームダウンが老け見えにつながる不安
髪が減ったように感じると、見た目の印象にも変化を感じることがあります。ボリュームが落ち着いてしまうと、顔の輪郭が強調されたり、疲れて見えたりと、これまで気にならなかった部分が気になるようになることも。
ふんわりとした髪の質感が出しにくくなったと感じると、「年齢を感じる見た目になってしまったかも…」と、ちょっとした焦りにつながることもあるかもしれません。
鏡を見るたび気分が沈んでしまうときは
毎朝、鏡を見るたびに抜け毛の跡が目に入り、ため息が出てしまう。そんな日が続くと、気持ちまで落ち込んでしまうことがあります。そんなときは、どうか無理をせず、そのままの気持ちを大切にしてみてくださいね。
髪の変化に気づいたときこそ、自分自身の体と心をいたわるきっかけととらえて、無理のないケアを少しずつ取り入れてみるのもひとつの方法かもしれません。
無理せずできる、産後の髪と心のセルフケア
日々の生活に追われて、自分のケアが後回しになってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、「無理のない範囲で、できることから少しずつ」取り入れてみるのもひとつの方法です。ここでは、産後の髪と心をいたわるために、手軽に取り入れやすいセルフケアをご紹介します。
毎日の中でできる、無理のないセルフケア
産後の髪と心をいたわるセルフケアは、特別なことをしなくても、日々の中で少しの工夫を取り入れることで始められます。以下に、具体的な方法をいくつかご紹介します。
1)シャンプー前のブラッシングで髪の絡まりを防ぐ
シャンプー前に髪をブラッシングすることで、髪の絡まりをほどき、シャンプー時の摩擦を減らすことができます。また、頭皮の血行促進にもつながります。
2)予洗いで汚れをしっかり落とす
シャンプー前にお湯で1〜1分30秒ほど髪と頭皮をすすぐことで、汚れや皮脂を落とし、シャンプーの泡立ちを良くします。
3)シャンプーは泡立ててからやさしく洗う
シャンプーは手のひらでよく泡立ててから、指の腹を使って頭皮をやさしくマッサージするように洗います。爪を立てると頭皮を傷つける恐れがあるため、注意が必要です。
4)ドライヤーの使い方を見直す
髪を乾かす際は、ドライヤーを髪から20cm以上離し、根元から毛先に向かって風をあてます。同じ場所に長時間あてないようにし、最後に冷風を使って髪の熱を冷ますと、ツヤが出やすくなります。
5)香りやマッサージでリラックスタイムを
お気に入りの香りのシャンプーや、頭皮マッサージを取り入れることで、リラックス効果が期待できます。例えば、シャンプー時に頭頂部の“百会”(頭の中心線と左右の耳を結ぶ線が交わるところ)や、うなじの“風池”(首の後ろ生え際うなじの筋肉のすぐ外側のくぼみ)といったツボをやさしく押すことで、自律神経を整える効果があるとされています。
食事・睡眠・心の余裕が髪にも影響する
産後の髪の状態は、外側のケアだけでなく、体の内側からの影響も大きく関わっています。とくに「食事」「睡眠」「心のゆとり」は、髪の健やかな成長を支える三本柱ともいえるでしょう。
1)食事で髪の“材料”をしっかり補う
髪の主成分は「ケラチン」と呼ばれるたんぱく質です。そのため、たんぱく質をしっかりと摂ることは、髪の成長に欠かせません。産後はつい自分の食事が後回しになりがちですが、以下のような栄養素を意識してみてください。
- たんぱく質:肉・魚・卵・豆腐・納豆など
- 鉄分:レバー・小松菜・ひじきなど
- ビタミンB群:豚肉・玄米・バナナなど(細胞の代謝を助けます)
- 亜鉛:牡蠣・ごま・チーズなど(髪の合成に関与)
食欲がない日でも、具だくさんのお味噌汁やスムージーなどで、栄養を手軽にとる工夫もおすすめです。
2)睡眠はホルモンと頭皮のリズムを整える
出産後は授乳や夜泣きで、まとまった睡眠をとるのが難しい日々が続きます。それでも、短い時間でも“深く眠る”ことが大切です。睡眠中には成長ホルモンが分泌され、体の回復や細胞の修復が進みます。
寝る前はスマートフォンの光を避けて、あたたかいお茶を飲んだり、部屋の照明を落として気持ちを整えるなど、眠りに入りやすくなる工夫をしてみましょう。深夜に起きたあとも、無理に眠ろうとせず、横になって体を休めることを意識するだけでも違います。
心の余裕が髪と肌にあらわれることも
心に余裕がないとき、人は呼吸が浅くなったり、血流が滞りがちになります。ストレスを溜めないようにすることで、抜け毛の予防につながります。
「疲れてるな」と感じたら、ひと呼吸して、手をとめる時間をつくってみてください。お気に入りの香りを楽しむ、深呼吸をする、5分だけ目を閉じて横になる…どんな小さなことでも、自分にやさしくする時間は、心と髪の両方をいたわるケアになります。
「頭皮から整えるケア」で、未来の髪を守る
髪の健康を保つためには、毛先や表面のケアだけでなく、その“土台”である頭皮を整えることがとても大切です。肌と同じように、頭皮にも乾燥・ベタつき・血行不良などの変化が現れます。産後はホルモンバランスや生活リズムの変化から、頭皮の状態もゆらぎやすくなります。
1)スカルプケアは髪の「土台づくり」
まず大切なのは、頭皮専用のケア製品を取り入れることです。産後のデリケートな頭皮には、洗浄力が穏やかで保湿力のあるシャンプーがおすすめです。
また、トリートメントも毛先だけでなく、頭皮ケア成分配合のものを選ぶことで、うるおいを与えながら環境を整えることができます。毎日使うアイテムを変えるだけでも、徐々に頭皮のコンディションが安定していきます。
2)頭皮マッサージで血のめぐりをサポート
もう一つのポイントは、頭皮の血行を促すマッサージです。シャンプー中に、指の腹で円を描くように頭皮を動かすことで、こわばった頭皮がやわらぎ、血のめぐりが良くなります。
血流が整うと、毛根までしっかりと栄養が届きやすくなり、健康的な髪の成長につながります。力を入れすぎず、リズムよく、気持ちいいと感じる程度で続けることが大切です。また、ドライヤーの前にスカルプ美容液をなじませると、頭皮のうるおいバランスが整いやすくなります。
監修医師コメント
産後の大量脱毛の多くは、出産後に急減するエストロゲンが誘発する一過性の休止期脱毛であり、通常6〜12 か月で自然に回復します。とはいえ、抜け毛が1年以上続く/頭皮に炎症・円形脱毛がみられる/急激にボリュームが減る場合は、甲状腺機能低下症や鉄欠乏などが隠れていることもあります。早めに皮膚科や産婦人科へご相談ください。バランスのとれたタンパク質・鉄分摂取、十分な休息、そして無理のないヘアケアが回復を後押しします。
まとめ
産後の抜け毛は、多くの方が経験する自然な変化です。けれども、思っていた以上に心が揺れたり、自分のことが後回しになってしまったりと、見えないつらさを抱えている方も少なくありません。
毎日の忙しさの中で、「こんなことで悩むなんて」とつい自分を責めてしまうこともあるかもしれません。でも、不調を見過ごさずに「いま」の自分と向き合うことは、未来のあなたをやさしく守ることにもつながります。
m.i(ミィ)は、そんな“しょいこみ期”を過ごす女性に、そっと寄り添う存在でありたいと願っています。こころを支える小さな言葉や、からだをいたわるケアを通して、あなたが自分らしく過ごせる毎日を、そっと見守っていきます。