Vol.03

女性ホルモンのピーク。妊娠出産、キャリア…
しょいこみを抱える性成熟期

  • 2024.8.20
  • m.i journal vol.03
  • コラム

八田 真理子さん聖順会ジュノ・ヴェスタ クリニック 八田
理事長・院長

1965年7月生まれ。千葉県松戸市出身。産婦人科医。聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院産婦人科勤務を経て、1998年実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、地域に密着したクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」として開院。思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行っている。1日80人以上の患者さんを診察し、女性のヘルスケアに関する相談会やセミナーなどを通じて、性教育・不妊・更年期などの正しい知識の啓蒙にも積極的に取り組んでいる。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)、『思春期女子のからだと心 Q&A』(労働教育センター)など。

性成熟期のしょいこみについて

からだのしょいこみ

性成熟期(18~45歳ごろ)は女性ホルモンが一番出ている時期で、一番きれいなときです。妊娠出産に適した時期でもあります。赤ちゃんを望んでいるなら、生み時、育て時があるということは、一番お伝えしたいことです。月経は妊娠出産をするための準備で、それを一生のうちに400~450回くらい経験するわけですが、性成熟期はホルモンが一番安定していますので、妊娠出産に適した年齢です。もちろん、子どもを持つか持たないかは全く自由ですし、持たないという選択肢もいいと思います。

その一方で、女性ホルモンが多く出ている時期だからこそ、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸がんも増える時期です。子宮頸がんはちょうど妊娠適齢期である20~30代に増えてきます。子宮頸がんが発症すると妊娠をあきらめなくてはいけなかったり、妊娠トラブルが起こったりします。そのようなしょいこみがあります。女性ホルモンで守られているとはいえ、やはり気をつけなくてはいけないですね。

定期的に婦人科検診を受けるのはもちろん、自分の月経の状態をチェックすることが大事です。痛みがあるかどうか、痛み止めを飲む回数が増えているか、不正出血がないかどうか。それから月経の量がどれくらいか。たとえばナプキンを1時間に1回交換しなくてはいけない日が2日以上ないかどうかなど。基礎体温を測ったりアプリを使ったりして自分の体の変化を記録して、自分の体に注目することが大事です。自分の一番の理解者は自分です。私は、基礎体温を記録していましたね。この時期、ぜひ自分の体に目を向けてあげてください。

 

こころのしょいこみ

この時期は、揺らいでる人が多いですね。ちょうどキャリアアップの時期と妊娠出産の適齢期が重なるので、ここで産むべきか、キャリアを積んでいくか、ちょっと先にするかと。今、卵子凍結の話も出ていますが、産婦人科医の立場から申し上げると、妊娠、出産、子育ては先送りにしない方がいいし、社会が応援してくれる時代になっています。キャリアは後から取り返すことができます。パートナーがいて、赤ちゃんを望んでいるなら、ぜひ先送りしないでということはお伝えしたいです。

妊娠出産は女性にとって大事業です。高齢になればなるほどリスクが高くなるので、妊娠中の高血圧、糖尿病、前置胎盤などトラブルが多くなり、妊娠中にずっと入院しなくてはいけない方も見てきました。それまでの生活習慣が、妊娠中のトラブルとして出てくることがあります。不妊治療をする人も増えていますが、努力すれば結果が出るものではなく先が見えないため、切実なしょいこみとなります。また、卵巣への負担もかかります。

 

からだの変化によるこころへの影響、こころの変化によるからだへの影響

月経前症候群(PMS)という概念は以前あまり知られていなかったのですが、月経前3~7日に起こる女性の不調です。黄体ホルモンが出て、むくみや胸の張り、気分の落ち込みが出てくる時期です。PMSは8~9割の女性が経験しています。私自身も非常にひどくて、人が変わるくらいイライラしていたのですが、黄体ホルモンが悪さをしていたんだなっていうことが後からわかりました。

この時期は体力的にも頑張れる年齢だし、ちょうどキャリアを積んでいく年代なので、仕事のやりがいを感じる人が多いと思います。だからといって、夜遅くまで仕事を抱えていたり、不規則な生活をしたり、喫煙やお酒の飲み過ぎなどは、後から病気が出てきます。月経も乱れることがあります。

月経が毎月くるかどうかは、大切な健康のバロメーターです。異常があれば、無理しないでというサインだと思うといいですね。少しペースを落としたり、働き方を変えてみるなどしていただきたいと思います。あまりにも月経痛がひどい人や月経の量が多くてつらい人は、低用量ピルやホルモン治療で排卵をお休みさせる方法をとることも一つの案です。月経をコントロールすることもできる時代になっています。さまざまな変化をこころとからだに感じる年代ですので、不安なことがあれば私たち産婦人科医に気軽にご相談ください。