Vol.31

妊娠中に使えるアロマオイルとは?避けたい精油とおすすめの使い方【医師監修】

  • 2025.10.7
  • m.i journal vol.31
  • コラム

西野 枝里菜さん産婦人科専門医

東京大学理学部生物学科を卒業後、同大学薬学部薬科学専攻修士課程を修了。名古屋大学医学部医学科を卒業し、JCHO東京新宿メディカルセンターで初期研修を行う。その後、都立大塚病院で産婦人科後期研修を修了し、久保田産婦人科病院に勤務。基礎科学から臨床医学に至る幅広い学びと経験を活かし、産婦人科医として女性の健康を支えている。
資格:産婦人科専門医/母体保護法指定医/日本医師会認定産業医

妊娠中は、香りに敏感になったり、ちょっとした体の不調が気になったりすることがありますよね。リラックスしたくてアロマを取り入れてみたいけれど、「本当に使っても大丈夫?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。この記事では、妊娠中に避けたいアロマオイルの種類や、安心して使える精油の選び方、悩みに応じた香りの活用法までを丁寧にご紹介します。読み終えるころには、香りを味方につけて、心も体も穏やかに過ごすヒントが見つかるはずです。

妊娠中にアロマオイルを使っても大丈夫?

妊娠中でも、体調や時期に配慮して精油を選べば、アロマを生活に取り入れることは可能です。精油は香りによるリラックスや気分転換に役立つ一方で、子宮収縮やホルモンに作用する成分を含むものもあります。特に妊娠初期は体が不安定で影響を受けやすいため、この時期は精油の使用を控えることが推奨されています。

中期以降も「すべての精油が安全」というわけではなく、種類や濃度、使い方によって体調に影響する可能性も少なくありません。原液を直接肌に塗布したり、高濃度での使用は避けましょう。取り入れるときは、芳香浴やディフューザーで空間にやさしく香らせる程度から始めるのが基本です。また、アロマの使用は医学的な治療に代わるものではありません。持病がある方や不安を感じる方は、自己判断せず、必ず医師や専門家に相談して取り入れることが安心につながります。

妊娠中の体への影響とアロマの関係

妊娠中はホルモンの影響で体調や感覚が変わり、香りに敏感になる人も多く見られます。アロマの香りは気持ちを落ち着けたり、気分を前向きにしたりといった変化をもたらしてくれますが、中には避けたほうがいい精油もあります。例えば、子宮に刺激を与えると言われているものや、香りが強すぎるものには注意が必要です。妊娠中は特に、体調に合わせて少しずつ取り入れていくことが大切です。

アロマオイルの使い方によっては注意が必要

アロマオイルは使い方によっては体調に影響することもあるため、取り入れ方には工夫が必要です。原液を肌に直接つけたり、濃度が高すぎる使い方は避けましょう。妊娠中は香りへの感受性が高まることもあるため、芳香浴やハンカチに1滴垂らすといった方法から試すのが安心です。使用前に香りを確かめ、自分にとって心地よいと感じる範囲で取り入れるようにしましょう。

妊娠中に避けたいアロマオイルの種類

妊娠中には、避けたほうがよいとされる精油がいくつかあります。特に妊娠初期は体が不安定で影響を受けやすいため、どの精油も基本的に使用を控えるのが安心です。そのうえで、妊娠全期間を通して避ける精油と、中期以降でも注意が必要な精油を整理してご紹介します。

妊娠全期間を通して避けるべき精油

妊娠中は使用を控えたほうがよい精油があります。子宮収縮やホルモンへの作用、強い刺激性などが指摘されており、少量でも体に影響する可能性があるため注意が必要です。

・クラリセージ(Salvia sclarea): 通経作用があり、子宮を刺激する可能性がある

・ジャスミン(Jasminum officinale): 分娩促進作用があるとされる

・ローズマリー(Rosmarinus officinalis): 血圧を上げ、子宮を刺激する可能性がある

・セージ(Salvia officinalis): 神経毒性のある成分を含むため、経皮吸収に注意

・シナモン(Cinnamomum zeylanicum): 刺激が強く、肌や粘膜への影響が大きい

・フェンネル(Foeniculum vulgare): エストロゲン様作用があり、ホルモンバランスを乱す可能性がある

・バジル(Ocimum basilicum): 子宮刺激や神経への影響が指摘されている

妊娠中の全期間を通してリスクがあるため、芳香浴やスキンケア、マッサージなどの用途でも使用は避けるようにしましょう。

中期・後期でも注意が必要な精油

妊娠中期〜後期(16週以降)は体調が安定してくる方が多く、アロマセラピーを生活に取り入れたいと考える方も増えてきます。ただし、「すべての精油が安全になる」というわけではありません。

以下の精油は、中期・後期であっても慎重な使用が求められます。

・ラベンダー(Lavandula angustifolia): リラックス作用がある一方で、種類によってはホルモン様作用を持つため注意が必要

・ティートゥリー(Melaleuca alternifolia): 抗菌・抗炎症作用など刺激が強い

・ペパーミント(Mentha piperita): 冷却作用や刺激性が強く、人によっては胃腸への影響も

・ユーカリ(Eucalyptus globulus): スーッとした香りが刺激的で、呼吸器への影響が心配されることも

・カモミール(Chamaemelum nobile): 体質によってはアレルギーを引き起こすことがあるため、使用前のパッチテストが必須

中期以降は、芳香浴やディフューザーを使って「空間に香らせる」程度でアロマを楽しむのがおすすめです。肌への使用やマッサージに取り入れたい場合は、必ず医師やアロマセラピストに相談し、使用濃度(0.5〜1%以下)を守って使うようにしましょう。

妊娠中のケアに向いているアロマオイルの選び方

妊娠中にアロマオイルを取り入れるときは、香りや成分をしっかり確認することが大切です。精油は天然成分でも体に強く作用するものがあり、妊娠中に適さない種類もあります。だからこそ「品質」「使う目的」「使用方法」の3つを意識しながら、自分の体調に合った香りを選ぶようにしましょう。

100%天然で添加物の少ない精油を選ぶ

精油を選ぶときは、原材料の純度と品質を重視しましょう。合成香料や保存料が含まれていない、100%天然のものがおすすめです。ラベルに「ピュア」「無添加」といった表記があるものが目安になります。さらに「医療グレード」「オーガニック認証」など、品質を裏付ける基準を満たしているか確認するといいでしょう。妊娠中は香りに敏感になるため、できるだけシンプルな成分のものを選ぶことがポイントです。

使用目的に合わせて香りの系統を選ぶ

アロマにはリラックス向き、リフレッシュ向きなど香りの系統があります。妊娠中に比較的取り入れやすいとされるのは、柑橘系(レモン、スイートオレンジ、グレープフルーツなど)です。香りが軽く、気分転換やリフレッシュ向きです。ただし、ベルガモットやレモンなど光毒性を持つ種類は肌につけた場合に日光で炎症を起こすことがあるため、芳香浴(アロマディフューザーで香りを嗅ぐこと)での使用がおすすめされています。

一方、ラベンダーはリラックス作用があるとされますが、妊娠初期は体が不安定なため念のため控える方が安心です。中期以降に使用する場合も、必ず低濃度かつ少量から試しましょう。目的に合わせて「安全に使える時期かどうか」もあわせて意識することが大切です。

肌に使う場合は刺激の少ないタイプを選ぶ

妊娠中は肌が敏感になりやすく、今まで平気だった精油でも刺激を感じることがあります。肌に使用する場合は、必ずキャリアオイルで0.5〜1%以下に希釈し、事前にパッチテストを行いましょう。

比較的刺激が少ないとされる精油には、ティートゥリー(Melaleuca alternifolia)や真正ラベンダー(Lavandula angustifolia)があります。ただし、妊娠初期には使用を控えるべきとされる見解があるため、取り入れる場合は中期以降に限定し、医師や専門家に確認しながら慎重に使いましょう。

肌に使う場合は、まずは芳香浴などの間接的な方法から試すのが無難です。安全性を最優先に、少しずつ取り入れていくことが安心につながります。

妊娠中の悩み別おすすめのアロマオイル

妊娠中は「つわりで気分が悪い」「眠りが浅い」「気分の浮き沈みがある」など、心身の変化によってさまざまな不調を感じやすい時期です。そんなとき、香りをうまく取り入れると気分転換やリラックスの助けになることもあります。ただし、精油は妊娠期によって注意が必要なものもあるため、時期や体調に合わせて無理のない範囲で取り入れることが大切です。ここでは、よくある悩みに合わせた香りの活用法をご紹介します。

つわりの不快感をやわらげたいとき

吐き気やにおいへの敏感さがつらいつわりの時期は、香りの強さに注意が必要です。特に妊娠初期は精油の使用を避け、自然の柑橘の香りを感じる程度に留めるといいでしょう。

中期以降であれば、レモンやグレープフルーツ、スイートオレンジなどの柑橘系の香りが気分転換に役立ちます。柑橘系は比較的穏やかな香りで、リフレッシュしたいときにも向いています。ハンカチやティッシュに1滴たらして持ち歩くと、外出先でも自分のタイミングで香りを取り入れられるでしょう。

眠りが浅い夜にリラックスしたいとき

寝つきが悪かったり、夜中に何度も目が覚めてしまうときは、落ち着いた香りが役立ちます。ラベンダーやスイートオレンジはリラックスを促す代表的な精油ですが、ラベンダーは妊娠初期の使用を避け、中期以降から少量を試すのが望ましいとされています。

使うときはディフューザーで部屋全体にごく薄く香らせたり、寝具にほんのり香りを移したりする程度で十分です。強すぎない香りを選び、体調に合うかを確かめながら取り入れていきましょう。

気分の浮き沈みやストレスを整えたいとき

妊娠中はホルモンバランスの影響で気持ちが不安定になりやすく、ストレスを感じやすい時期でもあります。そんなときには、ベルガモットやゼラニウムといった、気持ちを前向きにサポートしてくれる香りが好ましいです。

ただし、これらの精油も妊娠初期は避け、中期以降に取り入れるのがいいでしょう。使い方は、アロマストーンやマグカップにお湯を注ぎ、そこに1滴落とす程度で十分。身近にやさしい香りを感じられる工夫をすると、気分が落ち込みそうなときも少しずつ前向きになれるはずです。

まとめ

妊娠中は、ふだんは気にならなかった香りに戸惑うこともあるかもしれません。

でも、「いい香りだな」と感じられる瞬間は、心と体にそっとやさしく寄り添ってくれるものです。

無理のない範囲で、自分の感覚を信じて選んだ香りは、穏やかな時間を届けてくれるはず。

m.i(ミィ)は、その小さな心地よさが、あなたの毎日をやわらかく包むことを願っています。

今日の香りが、深呼吸とともに、あなたに静かなぬくもりをもたらしますように。