妊娠中のデリケートゾーンのにおい|原因と、心身を守るやさしいケア方法【医師監修】
- 2026.6.4
- m.i journal vol.54
- コラム

西野 枝里菜さん産婦人科専門医
東京大学理学部生物学科を卒業後、同大学薬学部薬科学専攻修士課程を修了。名古屋大学医学部医学科を卒業し、JCHO東京新宿メディカルセンターで初期研修を行う。その後、都立大塚病院で産婦人科後期研修を修了し、久保田産婦人科病院に勤務。基礎科学から臨床医学に至る幅広い学びと経験を活かし、産婦人科医として女性の健康を支えている。
資格:産婦人科専門医/母体保護法指定医/日本医師会認定産業医

妊娠してから「なんだかにおいが変わったかも?」と不安になることはありませんか。誰にも相談できず、一人で悩んでしまうママも少なくありません。でも、それはお腹の赤ちゃんを育てるために体が変化している証拠なのです。この記事では、においの原因と、今日からできるやさしいケア方法をご紹介します。不安になりすぎず、リラックスした気持ちで読んでいただけたら嬉しいです。
妊娠中ににおいが気になる理由

「妊娠してからにおいが変わった気がする」と感じるのは、決してあなただけではありません。妊娠中の体はホルモンの影響でさまざまな変化が起きています。においが気になる背景には、ちゃんとした理由があるのです。
ホルモンバランスの変化で分泌物が増える
妊娠すると、赤ちゃんを育てるために女性ホルモンの分泌が急激に増えます。この影響で、腟内を酸性に保とうとする働きが活発になり、おりものの量が増えることがあります。これは細菌の侵入を防ぎ、赤ちゃんを守るための大切な防御反応といえるでしょう。いつもより下着が汚れやすくなったり、湿り気を感じたりすることで、においがこもりやすい環境になってしまうのです。
妊娠中は匂いに敏感になる
つわりの時期に「炊き立てのご飯のにおいがダメになった」という経験をする方は多いものです。実は、妊娠中はホルモンの影響で嗅覚がとても敏感になります。そのため、普段なら気にならないようなわずかな体臭やおりもののにおいも、強く感じてしまうのかもしれません。実際には周囲の人が気づかないレベルであることがほとんどですので、あまり神経質になりすぎないようにしましょう。
デリケートゾーンのにおいの変化とは

一口に「においが気になる」といっても、その種類や程度はさまざまです。どんなにおいが正常の範囲で、どんなにおいのときに注意が必要なのかを知っておくと、いざというときに慌てずに済むでしょう。
酸っぱいようなにおい
健康な腟内は、雑菌の繁殖を防ぐために「乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)」という善玉菌によって強い酸性に保たれています。そのため、少し酸っぱいようなにおい、あるいはヨーグルトのようなにおいがするのは、腟内の自浄作用が正常に働いている証拠といえます。妊娠中は分泌物が増えるため、この酸性のにおいを強く感じる場合がありますが、体が順調に働いているサインと考えてよいでしょう。
注意が必要な気になるにおい
一方で、注意が必要なにおいもあります。たとえば、魚が腐ったような生臭いにおいや、強い刺激臭がする場合は、細菌性腟症などのトラブルが起きている可能性があります。また、おりものの色が黄色や緑色っぽくなっていたり、ポロポロとしたカッテージチーズ状になっていたりする場合も注意が必要です。普段と明らかに違う変化を感じたら、次の健診まで待たずに産婦人科医に連絡してみましょう。
においを強くする習慣・避けたいこと
においが気になると、ついやりすぎてしまう行動があります。実は「良かれ」と思ってしていることが、逆効果になっているケースも少なくありません。日常のなかで見直せるポイントを確認してみましょう。
洗いすぎてしまう
においが気になると、ついお風呂で念入りに洗いたくなってしまうかもしれません。しかし、石鹸でゴシゴシと洗いすぎたり、腟の中まで洗ったりするのは避けましょう。腟内を守ってくれている善玉菌まで洗い流してしまい、かえって雑菌が繁殖しやすい環境を作ってしまうことになりかねません。デリケートな場所だからこそ、過度な洗浄は控え、やさしく扱うことを心がけてみましょう。
通気性の悪い下着を着用する
妊娠中は体型をカバーしようとして、補正効果のある下着やストッキングを長時間着用することもあるでしょう。しかし、締めつけの強い下着や化学繊維の素材は、通気性が悪くムレの原因になります。ムレた状態が続くと雑菌が繁殖しやすくなり、においが強くなる原因につながってしまいます。おしゃれも楽しみつつ、お家ではゆったりとした服装で過ごすなど、メリハリをつけるのも良い方法です。
デリケートゾーンのやさしいケア方法

正しいケアを知っていると、においへの不安が和らぐものです。難しいことは何もありません。ここでは、毎日のお風呂タイムにできる、シンプルなケアのコツをご紹介します。
ぬるま湯でやさしく洗う
毎日のバスタイムでは、熱すぎないぬるま湯を使って、指の腹でやさしくなでるように洗うのが基本です。ひだの間にある恥垢(ちこう)という汚れはお湯だけで十分に落とすことができます。タオルやスポンジでこすると、繊細な皮膚を傷つけてしまう恐れがありますので注意してくださいね。恥垢はお湯でやさしく洗い流し、それ以外の部分は石けんの泡をクッションにして、手で包み込むように洗えば十分に清潔を保てます。
デリケートゾーン用ソープを使う
ボディソープは洗浄力が強すぎる場合があるため、デリケートゾーン用や弱酸性のソープを使用するのも一つの選択肢です。デリケートゾーン用ソープなら、腟周りのpHバランスを崩さずに汚れを落とすことができるでしょう。ただし、必ず使わなければならないわけではありません。においが気になるときだけ使う、週に数回のスペシャルケアにするなど、ご自身の肌の調子を見ながら取り入れてみてください。
下着選びと日常の工夫

においケアは、お風呂のなかだけで完結するわけではありません。日常の小さな選択の積み重ねが、快適さにつながります。今日からすぐに取り入れられる工夫を見てみましょう。
天然素材で通気性の良いものを選ぶ
直接肌に触れるショーツは、吸湿性と通気性に優れたコットン(綿)やシルクなどの天然素材を選ぶのがおすすめです。汗や分泌物をしっかりと吸収し、外に逃がしてくれるため、ムレやにおいの軽減に役立ちます。最近ではマタニティ用の可愛いコットンショーツもたくさん販売されていますので、お気に入りのデザインを探してみるのも楽しい気分転換になるかもしれません。」
おりものシートの使い方にも注意する
下着の汚れを防ぐために便利なおりものシートですが、長時間つけっぱなしにするのは禁物です。湿ったシートを使い続けると、雑菌の温床になりかねません。トイレに行くたびにこまめに交換することを心がけましょう。また、肌が敏感になっている時期ですので、布ナプキンやオーガニックコットンを使用したシートを試してみるのも、肌への負担を減らす助けになります。
食事や生活習慣で意識すること

体の内側からのケアも、においの改善に深く関わっています。特別なことをしなくても、毎日の食事や過ごし方を少し意識するだけで、体の調子が整いやすくなります。できる範囲で取り入れてみてくださいね。
腸内環境を整える食事
実は、腸内環境と腟内環境には深い関わりがあると言われています。便秘が続くと体内の老廃物が溜まり、体臭やおりもののにおいに影響することがあるのです。ヨーグルトや納豆などの発酵食品、食物繊維が豊富な野菜などを積極的に摂り入れ、お腹の中からスッキリさせることを意識してみましょう。バランスの良い食事は、ママの健康だけでなくお腹にいる赤ちゃんの成長にも良い影響を与えてくれます。
水分補給とストレスケア
妊娠中は代謝が上がり汗をかきやすくなるため、こまめな水分補給が欠かせません。水分をしっかり摂ることで、老廃物の排出がスムーズになり、尿やおりもののにおいが濃くなるのを防ぐ効果も期待できます。また、ストレスや疲労は免疫力を下げ、腟内のバランスを乱す原因にもなり得ます。好きな音楽を聴いたり、短時間のお昼寝をしたりして、リラックスする時間を大切にしてくださいね。
こんなときは医療機関へ相談を

セルフケアで対応できる変化もあれば、専門家に診てもらうことが大切な場合もあります。「これくらいで受診してもいいのかな」と迷う必要はありません。体からのサインを見逃さず、早めに対処することが一番の安心につながります。
受診の目安となる症状
においだけでなく、強いかゆみや痛み、排尿時のしみるような感覚がある場合は、カンジダ腟炎などの感染症にかかっている可能性があります。また、おりものがカッテージチーズ状や泡状になっている場合も治療が必要です。妊娠中は免疫力が下がっているため、こうしたトラブルは誰にでも起こりうるものです。「恥ずかしい」と思わずに、体のサインを見逃さないようにしましょう。
我慢せず早めに相談することが大事
妊娠中は免疫力が下がりやすく、「においが変わった」「おりものが増えた」という方は少なくありません。不安なことがあれば、気軽に主治医に相談してみましょう。デリケートな悩みは相談しにくいものですが、かかりつけの産婦人科医はママと赤ちゃんの強い味方です。早めに相談することで、赤ちゃんへの影響が少ないお薬を処方してもらうこともできます。次の健診まで待たずに電話で問い合わせてみても良いでしょう。一人で悩んでストレスを抱え込むよりも、専門家に診てもらうほうがずっと安心できますし、気持ちも楽になるはずです。
まとめ

妊娠中のにおいの変化は、赤ちゃんを守るための体の働きや、ホルモンの影響による一時的なものであることがほとんどです。あまり神経質になりすぎず、「体が頑張っているんだな」と自分をいたわってあげてくださいね。出産を終えてホルモンバランスが落ち着けば、自然と気にならなくなることも多いものです。今はゆったりとした気持ちで、マタニティライフを過ごしましょう。
m.i(ミィ)は、妊娠中や産後の変化に戸惑うあなたの心に、そっと寄り添いたいと考えています。できることから少しずつ、自分のペースで。完璧を求めなくても大丈夫です。あなたと赤ちゃんが、穏やかで健やかな毎日を過ごせますように。

