Vol.04

100人100通りのしょいこみ。
人生100年時代、更年期はリセットの時期

  • 2024.9.19
  • m.i journal vol.04
  • コラム

八田 真理子さん聖順会ジュノ・ヴェスタ クリニック 八田
理事長・院長

1965年7月生まれ。千葉県松戸市出身。産婦人科医。聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院産婦人科勤務を経て、1998年実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、地域に密着したクリニック「ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」として開院。思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行っている。1日80人以上の患者さんを診察し、女性のヘルスケアに関する相談会やセミナーなどを通じて、性教育・不妊・更年期などの正しい知識の啓蒙にも積極的に取り組んでいる。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)、『思春期女子のからだと心 Q&A』(労働教育センター)など。

更年期のしょいこみについて

からだのしょいこみ

思春期が上り調子だとすれば、更年期は下り坂といえます。女性ホルモンがすごく揺らぎながら下がっていきます。特に閉経の1、2年前は変動が大きいです。閉経は、最後の月経から1年間ないことをいいますが、45歳~55歳くらいの間に9割の女性が閉経を迎えます。

私はよく、「打ち上げ花火のフィナーレ」みたいだと言っています。ホルモンが多く出る瞬間があって月経トラブルが多いのです。月経の量がすごく多かったり、ダラダラ続いたり、止まったと思えば2、3カ月後多く出血したり…。しょいこみの時期ですね。100人いたら100通りのパターンがあります。

それとともに、更年期障害といわれている症状があります。ほてり、のぼせ、汗といった症状は日本人の約4割に表れます。一番多い症状は肩こり、頭痛、膝や手の痛み。四十肩、五十肩という関節痛、疲れやすいなど。更年期の症状は100種類以上あります。

ただ、更年期の症状だと思っていたら、大きな病気が隠されていたということもあります。女性の体を守ってくれていたエストロゲンの分泌が減ることによって、血圧が急に上がる、高脂血症、関節の痛みや骨粗しょう症のリスクもあります。また、65歳以上になると10人に1人くらい甲状腺機能低下症がみられます。がんも増えてきます。

月経不順だと思っていたら子宮体がんだったということもあります。これは乳がん同様多くの女性が発症する可能性がある病気です。乳がんは日本人女性の9人に1人といわれていてちょうど更年期世代がピーク。子宮体がんは乳がんと同じくエストロゲン依存性のがんです。一方、子宮頸がんはHPVウイルス感染です。

人生100年時代。女性は特に長生きです。ただ、自分のことが自分でできる健康寿命を延ばして、「健康寿命=平均寿命」になるといいですね。健康寿命を延ばすためには、更年期の過ごし方がとても大切です。更年期こそ自分の体の声を聞いてあげてください。今までの生活習慣をリセットする時期だと思います。私も、更年期を過ぎて食事をもう一度見直し、無農薬野菜や減農薬野菜、調味料を体にいいものにするなど心がけています。

 

こころのしょいこみ

更年期は、環境的な因子も大きく関わってきます。今までずっと育ててきた子どもが巣立つと心にぽっかりと穴が空く「空の巣症候群」。また、更年期の時期と親の介護の時期が一致することが多いですよね。親がどんどん年老いてくると、更年期の症状が強くなったり、体を害する方もいますね。私は「親は、あなたに介護してもらうことは幸せだけど、あなたが健康を害してまで、みてほしいとは思わないよ」ってよく言います。介護のことでしょいこむ方が多いですね。親への愛情はわかりますが、自分の健康がまず大事ですね。

 

からだの変化によるこころへの影響、こころの変化によるからだへの影響

更年期は肉体的な衰えをすごく感じる時期ですね。実際、私も感じました。1年前にはできたのに…とか。私は、あるとき「まあ、いいか」の精神を持つことにしたんです。まず自分を受け入れてあげて、今こうして元気でいること自体に感謝をすると寛容になります。

今は閉経後の人生が長くなったので、あちこち痛くなったり病気になったりするのは当然なんです。私も更年期の初めのころは、なんでこんなに具合が悪いんだ、なんでできないんだとか、自分に対して「なんで、なんで」って思ったんですね。でも、「しょうがないよね。よしよし」と自分を受け入れると、痛みもすっ飛びましたね(笑)

多くの女性がしょいこみを経験する時期ですが、更年期の先にある老年期を輝かせるため、再スタートできる時期でもあります。自分のこころとからだの声を聞いてあげて、食事や睡眠など今までの生活習慣を見直してみましょう。