Vol.02

心が体についていかない。
ホルモンに翻弄される思春期のしょいこみ

  • 2024.7.11
  • m.i journal vol.02
  • コラム

八田 真理子さん聖順会ジュノ・ヴェスタ・クリニック 八田
理事長・院長

1965年7月生まれ。千葉県松戸市出身。産婦人科医。聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院産婦人科勤務を経て、1998年実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、地域に密着したクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」として開院。思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行っている。1日80人以上の患者さんを診察し、女性のヘルスケアに関する相談会やセミナーなどを通じて、性教育・不妊・更年期などの正しい知識の啓蒙にも積極的に取り組んでいる。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)、『思春期女子のからだと心 Q&A』(労働教育センター)など。

思春期のしょいこみについて

からだのしょいこみ

思春期(8~18歳ごろ)は第二次性徴の始まりから初経を経て月経周期がほぼ順調になるまでの時期です。少女から成熟女性への移行期。急激に身長が高くなって女性らしい体になり、胸が大きくなって下の毛が生えてきて、月経が始まります。

体がどんどん大人になっていくのに、心だけはまだ子どものままで、月経をとても嫌がって、胸が大きくなったり下の毛が生えてきたりすることに対して「いやらしい」とネガティブなイメージを持つ子もいるのです。体の変化を嫌がり、心と体が一致しない子も増えていますね。中学生や高校生で、自分の外陰部がおかしいのではないか、色が濃いのではないかなど不安になる方もいます。

そのような子が増えている原因はいろいろあると思います。たとえば、兄弟姉妹が少なくなったため、思春期の成長を身近なところで見る機会が減ったことも影響しているかもしれません。また、以前は修学旅行や林間学校のときに大部屋に宿泊して大きなお風呂にみんなで一緒に入ってお互いの裸を見ていましたが、今はプライバシーを大切にして個室や二人部屋で宿泊する学校も多いため、自分の体がどう変化するのか知識がなく変化についていけないのかもしれません。

こころのしょいこみ

思春期はホルモンが活発に出てきて成長ホルモンも多く出てくるので、「ホルモンに翻弄されてしまう時期」なんです。女の子も男性ホルモンが出てくるので、ニキビが増えて性欲も出てきます。なんだかわからないけど、ムラムラする…みたいな。最近はLGBTがクローズアップされていますが、恋愛対象が同性であるというケースも多くなっています。誰にも相談できないといったしょいこみもあります。

また、排卵周期が整っていないため月経が不安定で、不正出血や月経痛が強くなることもあります。月経が面倒だな、いやだな、つらい、生きているのもいやだ、女性なんていやだと思い、相談する相手もいなくて一人でしょいこんでいる方もいますね。

からだの変化によるこころへの影響、こころの変化によるからだへの影響

ハッピーホルモンと呼ばれているセロトニンは女性ホルモンと関連があるので、女性ホルモンのバランスの変化で情緒不安定になりやすく、気分が落ち込んだり、イライラしたり、攻撃的になったり、思春期は心の変動が大きいです。「思春期うつ」にもなりやすく、男性の2、3倍うつになりやすいといわれています。

以前は月経困難症は20代30代に多かったのですが、今は10代で月経痛の子が多いですね。千葉県の中高生のデータによると、約8割に月経トラブルがあります。月経のときにお腹が重たくてお薬を飲まなければならず、学校に行きたくないという経験をしているのです。保健室で休む子や不登校の子も増えています。

この時期はホルモンの影響で太りやすいのが当たり前です。しかし、今はダイエットをしたり食事をおろそかにしてしまう、やせ願望を持った子が非常に多いです。必須ミネラルが不足して、だるいと言っている女の子も非常に多いですね。ダイエットして体重が急激に10 %以上減ると月経が止まってしまいますので気をつけていただきたいです。

また、精神的に落ち込んでいると視床下部からホルモンが出なくなり、月経が止まることもあります。実際に戦時中は多くの女性が無月経になっていました。大きなショックでホルモンがストップするのです。心とホルモンは連動しています。心身ともに健康なのが一番ですね。私は、月経トラブルがある子にはまず基本的なことを伝えます。ご飯をちゃんと食べようとか、よく寝るようにしようねとか、体を動かしてごらんとか、そういうことをお伝えしています。